現場監督にとって、建設中の建物の構造を管理するのは必須事項です。
構造に欠陥があると、建物自体に大きな影響を与えてしまします。
現場管理において構造を管理する割合は大きく責任も重大です。
しかし、特別な知識を常に頭の中に入れておく必要はありません。
設計図書(設計図)にある、構造図をきちんと読み取る事さえできれば大丈夫です。
読み取る為には用語の理解は大前提ですが、さらに構造図のどこを読み取らなければいけないのかも重要です。
今回は、構造図の読み取り方を解説します。
是非、あなたの現場の構造図を見ながら確認してみてください。

現役ゼネコン現場監督の私がしっかり解説します!

X(旧Twitter)にて現場監督あるあるをイラストや漫画で紹介しています。
こちらまでどうぞ→ X(旧Twitter)(@shochou2022)
構造設計標準図とは

構造図は、
一般的に「構造設計標準図」若しくは「構造設計標準仕様」が最初のページにあります。
これは、RC造の場合の一般的な共通の決まりや、共通で必ず表現するべき事が記載されています。
つまり、ここを無視して構造図を見る事はできません。
ただ、細かい文字が大量に敷き詰められているので、新人にとってはパッと見ただけで拒絶反応を起こしてしまうかもしれません。
しかし、一度よく読めばおおまかな事は理解出来るはずです。
まずは何が書いてあるのかとい事を知る為に、一度は全て読んでみましょう。
コンクリート強度を確認する

構造設計標準図の1ページ目に、「2.使用材料」という項目があります。
RC(鉄筋コンクリート)造の場合、当然ですが鉄筋とコンクリートの使用材料が記載されています。
少なくともこの二つは確認をしましょう。
コンクリートについては、「コンクリートの種類」「使用区分」「設計基準強度」「耐久設計基準強度」「品質基準強度」「スランプ」などが表になって記載されています。
- コンクリートの種類:「普通」とは、普通コンクリートの意。他に「軽量コンクリート」など。
- 使用区分 :コンクリートを使用する場所です。捨てコン、基礎、土間、躯体(1階~)など。
- 設計基準強度 :設計図で定めるコンクリートの強度。この数値を基準に構造設計を行っている。
- 耐久設計基準強度 :構造物の設計時に定めた耐久性を確保するために必要な強度の事。
- 品質基準強度 :設計基準強度と耐久設計基準強度のどちらか強度が大きい方の事。
- スランプ値 :生コンクリートの柔らかさを示す数値の事です。
コンクリートについては、この辺りを確認出来る様になりましょう。
他にも、粗骨材の大きさや混和剤の有無などが記載されている場合もあります。
注意して欲しいのは、設計図に記載されている強度で実際にコンクリートを打設するとは限らないという事です。
まず、この構造図をもとに「コンクリート配合計画書」をコンクリートプラント工場に作成してもらいます。
実際に現場で打設する生コンクリートは、「構造体強度補正値」(一般的に「温度補正」と呼ぶ)を強度にプラスします。
これは、生コンクリートが固まるのに、外気温が大きく影響する為の補正です。
寒すぎる時期と暑すぎる時期ではコンクリートの乾燥(固まって強度がでる)速度が違います。
その為、全国で各県ごとに補正を行う時期を定めています。
簡単に説明すると、春と秋は+3N、夏と冬は+6Nといった感じです。
実際には細かく期間が決まっていますので、コンクリート配合計画書で確認してみましょう。
なので、現場で実際に打設する生コンクリートの強度は、品質基準強度+補正強度になります。
鉄筋材の種類を確認する

コンクリートを打設する前に組み立てる鉄筋にも種類があります。
こちらもコンクリートと同様に表になっていると思います。
鉄筋は、「種類」「規格」「材質」「径」「使用箇所」「継手工法」などが記載されています。
- 種 類 :主に異形鉄筋です。リブのついた鉄筋の事です。他には「高強度鉄筋」などがあります。
- 規 格 :主にJIS規格に規定されている品番の事です。
- 材 質 :材質の部分には鋼材の名称が記載されています。(SD295など)
- 径 :鋼材の太さを表します。D10、D13,D16等(Dとは、英語で直径の意味のdiameterの頭文字)
- 使用箇所 :鋼材を使用する場所です。「柱」「梁」「スラブ」「壁」など。記載がない場合もあります。
- 継手工法 :鉄筋を継手にて一体化させる方法です。「ガス圧接継手」「機械式継手」「特殊継手」など。
※材質のSDとは、異形鉄筋を意味します。
高強度鉄筋の場合別のアルファベットで表記されますので、SD以外の表記だった場合は特別な材質の鉄筋を使用すると思いましょう。
※Ⅾ10、Ⅾ13などの径を表記する数値ですが、Ⅾ10=直径10mmというわけではありません。
Ⅾ10の最外径は9.53mmです。
しかし、それでは呼びにくいので近い数値に簡略しています。
鉄筋材はコンクリートのよう鋼材についての計画書はありませんが、「ミルシート」という「鋼材検査証明書」が発行されますので、現場に納入された鉄筋が構造図通りの材料かを、そこで確認します。
構造の検査の時(主に基礎配筋時)にミルシートの確認をするので、現場に早めに取り寄せましょう。
鉄筋コンクリート工事の品質管理方法を確認する

次に、「5.鉄筋コンクリート工事」という項目に注目しましょう。
ここでは、コンクリート・鉄筋・型枠の品質管理の方法にて記載してあります。
記載された通り、若しくは監理者に確認をしてそれぞれの管理を行いましょう。
コンクリートの管理
現場でコンクリート打設作業を行う場合、捨てコン打設などの建物本体に関係のないコンクリートは別として、構造物に使用するコンクリートを打設する際は、現場に運搬された生コンクリートが規定値を満たしているか確認する為に試験を行い、
打設後の強度が確認出来る様に「テストピース」と呼ばれるコンクリート強度試験用の「圧縮強度試験供試体」を採取しなくてはいけません。
試験をする際に確認するべき事項は以下の通りです。
1.打設立米(りゅうべい)数に対して何回試験を行うのか
基本的に最低1回は行うのですが、打設立米数が多い場合は2回、3回と試験をする場合があります。
150立米毎に1回とあれば、150立米以上打設する場合は2回試験が必要となります。
たとえ151立米でも、基本的には試験が必要となりますが、監理者に確認してみるのも手です。
また、コンクリート強度によって試験をする基準の立米数が変わる場合もありますので、よく確認しましょう。
2.テストピースはいくつ必要か
テストピースは、3本で1セットです。
何故ならば、コンクリートの強度試験をする際に3本圧縮強度試験を行って、その平均値を値とするからです。
なので、何回圧縮強度試験を行うのかを考えてから何セット取るのかを決めます。
一般的には、4週(材齢28日)強度試験(4週間後に圧縮強度試験を行う)は必須です。
まずそれで1セット。
次に、それ以外で構造図の中にテストピースについて記載されている事項を確認してください。
特に記載がない場合は、次に型枠の取り外し時期を考慮します。
4週強度試験は、4週間後に設計基準強度に達しているかを確認する為のテストピースです。
それ以外で強度を確認するのは、後で説明する型枠の取り外し時期のタイミングです。
コンクリートを打設後に型枠を取り外す作業を行うには、コンクリートの強度が規定値以上に出ている事を確認しなければいけません。
一般的に躯体の場合、
1.壁・柱のせき板型枠の取外し
2.スラブ型枠の取外し
3.梁下型枠の取外し
の3パターンがあります。
コンクリート打設後、4週間よりも前に型枠を取外す場合は、必ず必要です。
現場の工程でいつ型枠を取外すのかを確認し、4週間よりも前に実施するなら各セット分のテストピースが必要です。
そして、型枠を取外す前に圧縮強度試験を行い、強度が規定値以上になっている事を確認してから作業を行いましょう。
また、テストピース採取時の生コンクリート材料試験のタイミングや、写真を撮る際の必要写真についても監理者に確認が必要です。
せっかく試験を行ったのに、試験方法が違ったり証拠となる写真が足りないなどのトラブルにならない為にも、確認は必須です。

鉄筋の継手の管理
鉄筋工事の場合、鉄筋の継手工法が適正に行われたかどうかを管理する必要があります。
「重ね継手」の場合は、継手位置と重ね長さが規定通りになっているかの工事写真があればよいです。
「ガス圧接継手」、「溶接継手」、「機械式継手」などの場合、試験方法が構造図に記載されていると思います。
基本的にはガス圧接継手がまだ主流だと思いますが、試験方法がそれぞれで違いますので、よく確認をしてください。
今回は、ガス圧接継手の場合について解説します。
1.抜き取り試験を行う本数を確認する。
ガス圧接継手の場合、実際に現場で圧接を行った鉄筋を切断して、それをテストピースとします。
え?切ったらダメじゃん。って、なりますよね(笑)
その代わりに、切り取った部分をまた圧接して鉄筋を繋げます。
面倒くさいですよね。
詳しい説明は別の機会にしますが、とりあえず何本テストピースが必要かを構造図から読み取りましょう。
2.検査を行う回数を確認する
コンクリートの試験と同様に、圧接継手の試験にも規定があります。
よくあるのは、「同じ日に同じ班が圧接箇所200ヶ所を超える場合は200ヶ所ごとに一回行う」です。
なので、試験前に圧接箇所が何ヶ所あるのかを確認しておかなくてはいけません。
そして、圧接箇所が200に近い数だった場合は、
監理者に確認をするのをおススメします。
圧接の抜き取り検査の本数が増えるという事は、圧接箇所が増える事になります。
コストも増え、作業時間も増えます。
例えば、1回の試験に5本の抜き取りを行う事になっていた場合、2回だと10本取らなくてはいけません。
400ヶ所で10本ならまだしも、205ヶ所で10本だとなんとなく納得いかないですよね。
しかし、監理者が「必要です」と言えばやらなくてはいけないので、やんわりと聞く事をおススメします。
ちなみに、合計が200ヶ所未満であっても、別の日に圧接作業を行った場合はそれぞれに抜き取り試験が必要なので注意してください。
基礎の圧接作業が180ヶ所で、現場の都合で2日掛かった場合は、2日共抜き取り検査をする必要があります。
抜き取り試験を行う目的は、圧接継手を行う圧接作業員が有資格者であり、適切な圧接を行えているかを確認する為です。
じゃあ、同じ人ならいいじゃん。
と、なりそうなものですが、その日のコンディションや状況で圧接の施工精度が変わる場合もあります。
そこは勘違いしないようにしましょう。
もちろん、監理者が承諾してくれれば別の話ですが。
抜き取ったテストピースは試験場で引張試験を行い、母材破断(圧接部分で引きちぎれない)するかを確認します。
圧接作業を行った配筋部分のコンクリート打設をする前に確認をする必要があります。
コンクリート打設前に、試験結果をFAXなどで送ってもらいましょう。
抜き取り試験について詳しい説明は、下のリンクから確認してみて下さい。
型枠の存置期間と必要圧縮強度の管理
コンクリートのテストピースの時に少し説明しましたが、型枠の取外し(脱型)を行うのには、構造図で規定があります。
表になっていると思いますが、簡単に説明をすると、型枠を取外しが可能になる基準は、日数で判断するか、コンクリートの圧縮強度で判断するかの2択ですよ。と、いう事です。
日数の場合、「コンクリートの材令日」という欄に数字が記入されていると思います。
また、セメントの種類、部位、存置期間の平均温度などで日数が違うと思います。
該当するパターンで、これだけの日数が経過していたら脱型して良いということです。
(強度の確認不要)しかし、現場的には一日でも早く次に仕事がしたい所です。
その為に、圧縮強度での判定基準があります。
表に記載されている圧縮強度に達していれば、脱型が可能ということです。
その為にテストピースを採取し、強度を確認してから型枠の解体を行うのです。
例えば、せき板のコンクリート圧縮強度はどうなっているでしょうか。
5Nか10Nのどちらかだと思います。
つまり、それだけの強度が出ていたら極論次の日でも脱型可能と言う事です。
せき板とは、壁や柱、基礎などのいわゆる側板の事です。
スラブや梁など型枠の様に直にコンクリートを支えているわけではないので、脱型のタイミングが早くてもいいのです。
しかし、最近は強度が出ていても、せき板の脱型は2日目以降にすることと言う監理者も増えてきました。
計算上は良くても、実質的にコンクリートはまだ硬化し始めたばかりでまだそこまで硬くないので欠けやすい。
という理由と、脱型することでコンクリートの表面が露わになり、型枠がある時に比べて外気に面した表面の乾燥が早く進行します。
すると、早期に乾燥し始めた部分にクラック(ひび割れ)が発生する恐れがあるなどの理由からです。
クラックが発生すると、後処理が必要になってくるので、2日目以降の脱型は建物の品質を守る為には必要な事と思います。
くれぐれも、記載してある規定値(圧縮強度)が出ていないのに脱型するのはやめましょう。
型枠の存置期間について詳しく解説した記事があるので、参考にしてください。

まとめ
今回解説した項目は、構造図の基本中の基本の部分です。
しかし、基本だけにしっかりと押さえておかないといけない部分でもあるので、しっかりと覚えましょう。
構造図には、杭、コンクリート、型枠等の記載もありますが、ほとんどが鉄筋に関する事がメインと言ってもいいです。
鉄筋工事を制する者は、構造を制すと言っても過言ではありません。
鉄筋工事は奥が深いので、またの機会に解説をしたいと思います。