
スリーブ補強筋のメーカーの違いってあるんスか?
どれも同じじゃないんスか?
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現役現場監督の私がしっかり解説します。

鉄筋コンクリート造の梁には、配管や設備のために開孔が必要となることが多く、その開孔部の鉄筋補強は構造耐力を確保する上で非常に重要です。
スリーブ補強筋はその補強に使われる専用の鉄筋部材で、各メーカーから多様な製品が提供されています。
本記事では、現場監督として知っておきたいスリーブ補強筋の基本知識と、業界で代表的な製品「MAXウェブレン」「ダイヤレンNS」「スーパーハリーZ Mタイプ」を比較し、それぞれの特徴や適用条件を詳しく解説します。施工の効率化と品質確保に役立つ情報をお届けします。
1. スリーブとは
スリーブとは、鉄筋コンクリートの梁に設ける開孔部に使用される筒状の部材で、構造体の梁に配管やダクトなどの貫通を可能にするためのものです。通常は塩ビ管や鋼製スリーブが使用され、周囲のコンクリートの耐力を保持するために補強筋が設けられます。構造体の梁に穴をあける事になるので、その為の補強は重要なものです。
2. スリーブ補強筋とは
スリーブ補強筋は、スリーブの周囲に設置して開孔部の耐力低下を防止する鉄筋部材です。配管の通る孔によって失われるコンクリート断面を補強し、構造の安全性を確保します。曲げ加工や閉鎖型形状など、製品ごとに特徴があり、構造図をもとに構造計算を行う事で、既製品を使用する事が出来ます。鉄筋材を使用して補強する事も出来ますが、既製品の方が施工性が高く、安定した品質を保つことが出来る為、特に梁の場合は既製品のスリーブ補強筋を使用する事が多いです。
3. スリーブ補強筋の代表的なメーカー及び製品の紹介
- ・テイエム技研株式会社(MAXウェブレン)
- ・コーリョー建販株式会社(ダイヤレンNS)
- ・栗本商事株式会社(スーパーハリーZ Mタイプ)
4. 各スリーブ補強筋の製品紹介
MAXウェブレン(テイエム技研株式会社)
MAXウェブレンは、一筆書き加工により鉄筋を折り曲げ、一体成形した角形のスリーブ補強筋です。コンクリート設計基準強度は最大80N/mm²まで対応可能。開孔径はせいの1/3以下、開孔間隔は隣接孔径の3倍以上、へりあき(端部あき)は梁せいによって異なり、梁せいが450㎜以上700㎜未満の場合は175㎜、700㎜以上900㎜未満の場合は200㎜、900㎜以上の場合は250㎜必要です。柱際から開孔中心までの距離は、梁せい以上離さないといけません。耐久性のある折り曲げ端部が特徴で、鉄筋径はS6からS16まで対応しています。MAXウエブレンは、SS固定筋、J筋といった梁配筋にスリーブとスリーブ補強筋を取付しやすくする為の補助材があり、容易にかつ強固に取付ることが出来ます。
ダイヤレンNS(コーリョー建販株式会社)
ダイヤレンNSは、斜め45度に配置された閉鎖型形状による補強に優れたスリーブ補強筋です。コンクリート設計基準強度は最大100N/mm²まで対応可能で、より高強度コンクリートにも適応します。開孔径は梁せいの1/3以下、開孔間隔は隣接孔径の3倍以上、へりあきは他製品と違い、梁せい関係なく次の計算式の数値で求めます。(ダイヤレンNSのE寸法-開口径H)/2+ダイヤレンNSの鉄筋径/2+あばら筋径+かぶり厚さ(40㎜以上)。計算はスリーブ補強筋の構造計算を依頼した時にメーカーが行うので、計算書で確認する事になります。他メーカーのスリーブ補強筋のへりあき寸法より条件が良くなる場合があるので、へりあき寸法に不安がある場合はダイヤレンNSを採用するといいかもしれません。柱際から開孔中心までの距離は梁せい以上必要です。鉄筋径はS6~S16に対応。ダイヤレンNSには「ダイヤレンNSを用いた基礎梁端部小開口補強」という基礎梁に特化した適用範囲があり、基礎梁のスリーブ補強には多く採用される事がある。
スーパーハリーZ Mタイプ(栗本商事株式会社)
スーパーハリーZ Mタイプは、高強度鉄筋を一筆描きで連続成形した製品で、コンクリート基準強度は最大67N/mm²まで対応しています。開孔径は梁せいの1/3以下、開孔間隔は隣接孔径の3倍以上、へりあきは梁せいが500㎜以上700㎜未満の場合は175㎜、700㎜以上900㎜未満の場合は200㎜、900㎜以上1250㎜未満の場合は250㎜、1250㎜以上の場合は0.2×梁せい必要です。柱際から開孔中心までの距離は、孔が梁せいの中央にある時は梁せい以上、それ以外の場合は、梁せい+スリーブ呼び径/2が必要です。鉄筋径はS6~S16まで幅広く対応し、耐久性と施工性を両立した製品です。
5. スリーブ補強筋製品比較表
比較項目 | MAXウェブレン | ダイヤレンNS | スーパーハリーZ Mタイプ |
---|---|---|---|
製品概要・特徴 | 鉄筋コンクリート梁開孔部の補強用スリーブ筋。鉄筋を折り曲げ一体成形。外形は角形。 | 鉄筋梁貫通孔用の補強筋。閉鎖型構造で折り曲げ部分の補強に優れる。角形・丸形対応。 | 鉄筋梁貫通孔用高強度補強筋。785N/mm²の高強度鉄筋を一筆書きで連続成形。外形角形。 |
使用材料 | KSS785(MSRB-0005,0124,0125) | KSS785-K(MSRB-0004)・MK785(MSRB-0067) | KSS785-K(MSRB-0004) |
コンクリート設計基準強度(Fc) | 21~80N/mm² | 21~100N/mm² | 21~67N/mm² |
対応スリーブ径 | 呼び径 100~750φのスリーブ | 呼び径 100~750φのスリーブ | 呼び径 100~750φのスリーブ |
鉄筋径対応範囲 | S6、S8、S10、S13、S16 | S6、S8、S10、S13、S16 | S6、S8、S10、S13、S16 |
特殊性能 | 鉄筋の折り曲げ端部に耐久性あり | 折り曲げ部に補強金具が付き、耐久性高い | 785N/mm²高強度鉄筋使用、軽量化と作業性向上 |
評定・認定情報 | BCJ評定-RC0097-07 | BCJ評定-RC0124-08 | BCJ評定-RC0224-07 |
6.開孔関連寸法比較表
比較項目 | MAXウェブレン | ダイヤレンNS | スーパーハリーZ Mタイプ |
---|---|---|---|
開孔間隔 | 隣接孔径の平均値の3倍以上 | 隣接孔径の平均値の3倍以上 | 隣接孔径の平均値の3倍以上 |
へりあき(端部あき) | 梁せいの大きさによる | ダイヤレン構造計算式による | 梁せいの大きさによる |
柱際から開孔中心までの距離 | 梁せい以上 | 梁せい以上 | 梁せい以上(孔が梁中央の場合) |
7. スリーブ補強筋 色分け方法
メーカー | 製品名 | 色分け方法 | 識別箇所 |
---|---|---|---|
テイエム技研㈱ | MAXウェブレン | キャップにより孔径識別(黄・青・白・赤・黒)型式用(緑) | 補強筋本体端部 |
コーリョー建販㈱ | ダイヤレンNS | キャップにより型式識別(白・赤・黄・緑・橙)孔径はキャップに記載 | 補強筋本体端部 |
栗本商事㈱ | スーパーハリーZ | キャップにより型式識別(白・黄・青・緑・赤)孔径はシール貼 | 補強筋本体端部 |
📌補足
- MAXウエブレンは、孔径(スリーブ径)が色分けで識別できる。型式(鉄筋径)はS8、S13のみ緑キャップで識別。
- ダイヤレンNS、スーパーハリーZは型式(鉄筋径)が色分けで識別できる。孔径は数値が明記されている。
8. スリーブ補強筋施工時のチェックポイント
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- 補強筋の形状・寸法が図面通りか確認
➡️ 図面記載の開孔径・補強筋形状・本数・位置を事前に確認し、搬入品との相違がないかチェック。
- 補強筋の形状・寸法が図面通りか確認
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- 補強筋の取り付け位置・固定状況の確認
➡️ 開孔位置がズレると梁の耐力低下につながるため、所定の位置と水平垂直を確実に墨出し確認し、しっかり固定する。
- 補強筋の取り付け位置・固定状況の確認
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- 主筋との干渉状況と結束状態の確認
➡️ 補強筋と梁主筋・スターラップ筋が干渉していないか確認し、適正な結束ピッチ・方法で確実に結束されていることを確認。
- 主筋との干渉状況と結束状態の確認
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- 開孔間隔・へりあき・柱際距離の確認
➡️ 開孔間隔、へりあき、柱際距離がメーカー仕様の適用範囲に収まっているか確認。
- 開孔間隔・へりあき・柱際距離の確認
- コンクリート打設時の補強筋ずれ防止対策
➡️ 打設時に補強筋が浮きや傾き・ズレを起こさないよう、適切な支持金物・仮止めを行い、打設時にも確認を行う。
まとめ
スリーブ補強筋は配管開孔部の構造耐力を保つ重要な役割を果たします。メーカーの製品によって適用範囲が変わってくるので、構造図をよく確認して適正な製品を選定しましょう。構造設計の段階で製品を指定する場合もある為、製品の選定については監理者への確認が必ず必要です。また、スリーブ補強筋の構造計算をしてみないとどの様なスリーブ補強筋を使えばいいのかが分からない為、早めにメーカー選定を行い構造計算をメーカーにしてもらいましょう。場合によっては適応するスリーブ補強筋がないなんて事も、、。
施工条件や構造要求に応じて適切な製品を選定し、設計図書の仕様に沿った施工管理を行うことが現場監督の重要な役割です。