
コンクリート工事って色んな決まりがあるみたいだけど
沢山ありすぎてわからないっス。
こんなお悩みを解決します。

現役現場監督の私がしっかり解説します。

本記事では、公共建築工事標準仕様書 令和7年版の第6章「コンクリート工事」について、新人現場監督が押さえておきたいポイントをまとめました。
全16節の内容を分かりやすく要約し、施工管理で役立つ数値表や注意すべきポイントを整理しています。
現場での品質や安全確保に、ぜひお役立てください。
1. 共通事項
① 要約説明:
コンクリート工事全体に共通する基本ルールや施工計画のポイントをまとめています。
設計図書や法令の遵守が最も重要で、品質管理のための記録保存も欠かせません。
項目 | 基準・仕様 |
---|---|
管理基準 | JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)等 |
記録保存期間 | 原則5年以上 |
施工範囲 | 設計図書及び仕様書に基づく |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- 施工計画は設計・仕様書に必ず沿って作成し、関係者へ周知徹底する。
- 施工中のデータや記録は正確に残すこと。後日の検証に備えよう。
- 法令遵守と安全管理を最優先にし、違反リスクを排除する。
2. コンクリートの種類及び品質
① 要約説明:
コンクリートは用途や環境に応じて種類が分かれています。
普通コンクリート、軽量コンクリート、高流動コンクリートなど、目的に合わせた品質管理が必須です。
種類 | 主な用途 | 特徴・規格値例 |
---|---|---|
普通コンクリート | 一般建築構造物 | スランプ18±1.5cm、28日強度24〜33N/mm²など |
軽量コンクリート | 軽量化が必要な部位 | 密度1400〜2100kg/m³ |
高流動コンクリート | 複雑形状や狭隘部の打設 | スランプ55〜65cm |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- 設計用途に適した種類のコンクリートを選定し、変更時は監理者に確認を取る。
- 搬入時の品質確認(スランプ試験、空気量測定など)を必ず実施する。
- 寒中・暑中など環境条件による品質変化に注意し、適切な対策を講じる。
3. コンクリートの材料及び調合
① 要約説明:
骨材、セメント、水、混和剤などの材料の品質管理と調合設計がコンクリートの品質を左右します。
材料は仕様書に基づき選定し、調合は施工条件に合わせて最適化されます。
材料 | 規格・基準 | 備考 |
---|---|---|
セメント | JIS R 5210 普通ポルトランドセメント | 強度保証期間あり |
骨材 | JIS A 5005:2020 砕石、砂 | 清浄かつ適正粒度 |
混和剤 | JIS A 6204 減水剤、遅延剤等 | 適切な添加量管理が必要 |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- 材料受入時は規格適合を必ず確認し、不良品は使用中止。
- 調合比率は設計・施工条件に基づき正確に管理し、変更時は承認を得る。
- 材料の保存・管理状況(湿気・異物混入)を常にチェックすること。
4. レディーミクストコンクリート工場の選定、製造及び運搬
① 要約説明:
レディーミクストコンクリート(RMC)は工場で調合・混練され、現場へ運搬されます。
工場の選定は品質管理能力と運搬距離を考慮し、製造過程の厳格な管理と適切な運搬体制が求められます。
項目 | 基準・仕様 |
---|---|
工場選定基準 | JIS A 5308適合工場、品質管理体制の有無 |
製造管理項目 | スランプ管理、空気量、塩化物含有量 |
運搬時間 | 原則1.5時間以内、外気温により変動がある為品質確認必須 |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- RMC工場は認証・適合証明を確認し、信頼できる工場を選定する。
- 製造管理記録を現場で受領し、スランプなどの品質が仕様内か必ずチェックする。
- 運搬時間が長い場合は品質劣化リスクがあるため、現場で再確認・試験を行う。
5. コンクリートの品質管理
① 要約説明:
コンクリート品質管理は、設計強度の達成と施工品質維持のために不可欠です。
スランプや空気量、塩化物量、温度などを受入検査にて確認し、試験結果に基づく管理が求められます。
管理項目 | 基準・仕様 |
---|---|
スランプ | 基準値±1.5cm~2.5cm以内 |
空気量 | 4.0〜7.0%(許容差±1.5%) |
塩化物含有量 | 0.30㎏/㎥以下(鉄筋腐食防止のため) |
温度管理 | 35℃以下 |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- 試験結果をリアルタイムで確認し、基準値から外れた場合は直ちに対応する。
- 塩化物含有量は特に鉄筋腐食リスクに直結するため厳重に管理する。
- コンクリート温度の管理は現場の気象条件も考慮し、過度な温度上昇や低下を防ぐ。
6. 工事現場内運搬、打込み及び締固め
① 要約説明:
コンクリートは現場内で迅速かつ適切に運搬し、均一に打込みます。
さらに締固めを徹底し、気泡や空隙を除去して耐久性を高めます。
作業項目 | 基準・仕様 |
---|---|
運搬方法 | ポンプ車、バケット、シュートなど適切な方法を選定 |
打込み速度 | 遅すぎず早すぎず、連続して均一に行うこと |
締固め方法 | 振動機による十分な締固めを行う |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- 打込みは層厚を考慮し、寒中・暑中の場合の影響を意識する。
- 締固めは過不足なく、特に隅部やコーナーを重点的に行うこと。
- 運搬中のコンクリートの分離や乾燥を防ぐため、養生を含めた管理を徹底する。
7. 養生
① 要約説明:
養生はコンクリートの硬化と強度発現に重要で、適切な湿度と温度を維持する必要があります。
特に初期養生は強度確保のために重点的に管理します。
養生方法 | 条件・仕様 |
---|---|
湿潤養生 | 表面を湿らせ、急激な乾燥を防ぐ |
保温養生 | 寒中は温度低下を防ぐため加温 |
養生期間 | 通常5日間以上が望ましい。寒中は延長検討(養生期間はセメントの種類による) |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- 初期の表面乾燥防止を徹底し、ひび割れ発生リスクを抑制する。
- 寒中養生時は適切な保温対策を実施し、温度管理を怠らない。
- 養生期間を設計強度や気象条件に応じて適切に設定し、無理な早期解放は避ける。
8. 型枠
① 要約説明:
型枠はコンクリートを所定の形状に形成し、打込み時の圧力に耐えられる様組立てる。
強度・耐久性の確保のために適切な設計と施工管理が求められます。
型枠の要件 | 基準・仕様 |
---|---|
耐圧強度 | 打込み圧力に耐えられること |
密閉性 | 漏れや漏水がないこと |
変形抑制 | 打込み時の変形を防止 |
取外し時期 | 設計強度に達してから適切に行う |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- 打込み圧力を計算し、強度不足の型枠は使用しないこと。
- 型枠の継ぎ目や接合部の漏れ防止を徹底すること。
- 取外し時期は設計強度と養生状態を確認して慎重に判断する。
9. 試験等
① 要約説明:
コンクリートの品質確認のために各種試験を行い、設計基準強度や耐久性を検証します。
試験結果は施工管理の重要な判断材料となります。
試験種類 | 内容・目的 |
---|---|
スランプ試験 | コンクリートの打込み性の確認 |
圧縮強度試験 | 設計基準強度の達成確認 |
空気量試験、塩化物量試験 | 強度、耐久性能への影響。 |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- 試験結果は必ず記録し、設計基準と照合すること。
- 不適合時は速やかに原因調査と対策を実施する。
- 試験頻度とタイミングを施工計画に組み込む。
10. 軽量コンクリート
① 要約説明:
軽量コンクリートは骨材の密度を低減させ、建物の軽量化と断熱性向上を目的とします。
施工時は通常コンクリートと異なる特性に注意が必要です。
特性・仕様 | 内容 |
---|---|
単位容積質量 | 普通コンクリートより軽量(約1400~2100kg/m³以下)普通コンクリートは約2300kg/m³ |
断熱性能 | 高く、建物の省エネに寄与 |
強度 | 用途に応じて調整可能 |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- 軽量骨材の含水率を適切に管理し、調合のばらつきを防止する。
- 打込み時の沈降や分離に注意し、均一な施工を心掛ける。
- 強度管理を徹底し、用途に適した仕様を遵守する。
11. 寒中コンクリート
① 要約説明:
寒冷期に施工するコンクリートは凍結や硬化遅延のリスクが高いため、保温・加熱養生が必須です。
適切な管理で品質を確保し、ひび割れ防止に努めます。
管理項目 | 基準・対策 |
---|---|
コンクリート温度 | 打込み時は5℃以上を維持 |
養生方法 | 加温・保温資材の使用 |
養生期間 | 設計強度達成まで延長 |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- コンクリートの初期温度管理を厳格に行い、凍結を防止する。
- 適切な保温養生を計画的に実施し、温度低下を防ぐ。
- 寒冷期特有のひび割れリスクを常に意識し、早期対策を講じる。
12. 暑中コンクリート
① 要約説明:
暑熱期に施工するコンクリートは急速な水分蒸発と高温による硬化促進でひび割れや品質低下のリスクがあります。
適切な冷却・散水・養生管理が重要です。
管理項目 | 対策内容 |
---|---|
コンクリート温度 | 打込み時は35℃以下とする |
水分管理 | 散水や被覆養生で乾燥防止 |
打込み時間 | 短縮して早期養生を促進。練り混ぜから打ち込み終了まで90分以内とする |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- 打込み温度管理を徹底し、温度上昇を抑制する。
- 乾燥防止のため適切な養生資材の準備と使用。
- 施工計画に暑中対策を組み込み、作業時間の調整を行う。
13. マスコンクリート
① 要約説明:
マスコンクリートは大断面構造物向け(厚さ80cm以上)のコンクリートで、内部の温度管理が特に重要です。
発熱によるひび割れ防止と均一な硬化を目指します。
管理項目 | 基準・対策 |
---|---|
内部温度上昇 | 最大温度差は20℃以下に抑制 |
冷却対策 | 冷却管の設置や散水養生 |
養生期間 | 長期にわたり温度管理 |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- 発熱による温度差を監視し、ひび割れ防止対策を徹底する。
- 冷却設備や養生計画を事前に周到に準備する。
- 温度管理記録を詳細に残し、施工品質を保証する。
14. 無筋コンクリート
① 要約説明:
無筋コンクリートは鉄筋を使用しない構造体用で、圧縮強度や密実性が重要です。
適切な打込み・締固めと養生が品質保持に不可欠です。
管理項目 | 基準・ポイント |
---|---|
圧縮強度 | 設計値に適合させることが必須 |
打込み | 締固めを十分に行い空洞防止 |
養生 | 十分な期間湿潤養生を実施 |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- 打込み時の締固め不足により空洞が発生しないように注意する。
- 設計強度を確実に達成するための材料管理を徹底する。
- 養生期間中の湿潤状態を継続的に確認する。
15. 流動化コンクリート
① 要約説明:
流動化コンクリートは高流動性を持ち、ポンプ圧送や狭隘部施工に適しています。
流動性と強度のバランスが重要です。
管理項目 | 基準・仕様 |
---|---|
流動性 | スランプフローは45〜60cm |
強度 | 設計強度を確保すること |
打込み方法 | ポンプ圧送や型枠振動を適用 |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- 流動性が高いため、漏れ出しや分離に注意する。
- 強度を確保するため、材料配合と品質管理を徹底する。
- 打込み時は型枠の耐圧性能を確認し、適切に管理する。
16. 高流動コンクリート
① 要約説明:
高流動コンクリートは極めて高い流動性を持ち、複雑な型枠や密集した鉄筋間でも施工が容易です。
分離や沈降を防ぐための配合設計と品質管理が不可欠です。
管理項目 | 基準・仕様 |
---|---|
流動性 | スランプフローは55〜65cmが目安 |
分離防止 | 適切な混和剤使用と配合設計 |
施工管理 | 迅速な打込みと締固めを徹底 |
② 現場監督の施工注意ポイント3つ:
- 分離や沈降を防ぐため、混和剤の使用量を厳守する。
- 高い流動性により、型枠の漏れや変形に注意する。
- 施工時間を短縮し、品質劣化を防ぐための迅速な作業を行う。
6章 コンクリート工事 まとめ
この記事の要点:
コンクリート工事は多様な種類や施工条件に応じた品質管理と施工管理が不可欠です。
各節で触れた通り、材料の選定から打込み、養生まで細かい注意点を守ることが施工品質の鍵となります。
主要ポイントまとめ
- 品質管理:材料の調合や配合設計を厳守し、レディーミクストコンクリートの品質検査を徹底。
- 施工管理:現場内運搬、打込み、締固めを正確に行い、空洞や不良部分を防止。
- 養生:適切な期間・方法で養生し、強度発現とひび割れ防止を確実に行う。
- 特殊コンクリート:マスコンクリートや高流動コンクリートなど、用途に合わせた温度管理や流動性調整が重要。
- 環境条件:寒中・暑中コンクリートの施工では温度管理や混和剤の使用を適切に行うこと。
現場監督視点の施工注意点総括
- 品質チェックを怠らず、試験データや検査記録を管理する。
- 各工程での温度・流動性管理を徹底し、施工不良を未然に防止。
- 打込み・締固めの技術指導と現場確認を重視。
- 養生期間中の湿潤状態や養生方法を継続的に監視する。
- 異常が発生した場合は迅速な対応と記録を行い、原因解析を実施する。