鉄筋工事のガス圧接工事で抜き取り試験をするって聞いたんですけど、抜き取り試験とは何の事ですか?
こんなお悩みを解決します。
本記事の内容
- 鉄筋工事のガス圧接継手とは
- ガス圧接継手は資格が必要
- 圧接の抜き取り試験の手順
現役ゼネコン現場監督の私がしっかりと解説します!
鉄筋コンクリート造の鉄筋工事では、鉄筋と鉄筋をつなげる為の工法を、継手工法と呼びます。継手工法にはいくつか工法がありますが、一般的な工法が「ガス圧接継手」です。今回はガス圧接継手について実際の写真を参考にしながら説明します。
鉄筋工事のガス圧接継手とは
圧接とは、圧力と熱を加えて高温にした鉄筋同士を結合する工法です。柱の鉄筋は各階ごとに組み立てていきますが、柱の主筋となる鉄筋は、基礎から最上階まで一体化されていないといけません。
そこで、継手工法にて鉄筋を一体化します。
上の写真が柱の圧接作業の写真です。赤くなっているのは、熱(ガスの炎)で鉄筋が高温になっているからです。
赤く膨らんでいるのが圧接をしたばかりの部分です。高温で鉄筋を溶かしてつなげているので、圧接したばかりは真っ赤になっています。他の鉄筋にも膨らんでいる部分があると思います。
それらが圧接継手を行った場所です。
ガス圧接継手は資格が必要
資格種別ごとの圧接可能鉄筋径
- 1種・・・Ⅾ25以下
- 2種・・・Ⅾ32以下
- 3種・・・Ⅾ35以下
- 4種・・・Ⅾ51以下
4種の資格が最高位です。1種の資格だとⅮ25を超える鉄筋径のガス圧接は出来ません。
ガス圧接継手は特殊な工具を使います。また、ガスを使用して炎を取り扱う為とても危険な作業になります。よって、手動ガス圧接資格という資格が必要で、1種から4種までの種類があります。圧接が出来る鋼材の種類や鉄筋径によって区分され、4種が最高位になります。建設現場で働く圧接作業員は、4種の資格を持っている人が多いです。圧接作業をする時には、必ず資格証の確認が必要です。
圧接の抜き取り試験の手順
圧接作業は、現場で鉄筋と鉄筋をつなげる作業です。
もちろん有資格者が正しい作業手順で行うので、間違いが起きる事はほとんどありません。
しかし、現場監督が「大丈夫です!ちゃんと圧接出来てます。」と言っただけでは信用はしてもらえません。
なので、実際に現場で圧接した鉄筋を試験にかけて、本当にしっかりと圧接されているかを確かめます。
それを一般的に「抜き取り試験」と言い、抜き取った圧接部の鉄筋の事を「テストピース」と呼びます。
では抜き取り試験の手順を説明します。
圧接した鉄筋を切断する
上の写真にあるのが実際に現場で圧接をした鉄筋を切断して採取した状況です。
この切断した鉄筋が「テストピース」です。このように本来ならば圧接をして作業が終わる所を、試験用に切断してしまうのです。
では、切断した箇所はどうなったしまうのか気になりますね。もちろんですが、別の鉄筋を用意して再び圧接をして切断した部分を復旧させます。
再圧接を行う
わかりにくいかもしれませんが、上の写真は、抜き取り検査用に抜き取った部分に同じ長さの鉄筋を再び圧接を行ってつなげた写真です。抜き取り試験を行う為に、圧接箇所が増えてしまいますが試験の為なので仕方ないですね。
ちなみに、圧接箇所が200ヵ所以内で3~5本程度の抜き取りが必要です。(本数は設計図書の構造図記載か、監理者に確認が必要です)圧接箇所が200ヶ所を超える場合はテストピースは更に増えます。
引張試験を公共試験場で行う
試験用に抜き取った圧接した鉄筋のテストピースは、全て試験を行います。公共の試験場に持っていき、引張試験を行います。鉄筋は、引張力に強い材料です。試験用の機械で鉄筋を引っ張り、その鉄筋が破断するまで引っ張り続けます。
破断した時(機械で引っ張る事で最終的に鉄筋が引きちぎれる)に、圧接した場所ではなく、元々の鉄筋そのものの部分で破断すれば、圧接が適正に行われたと証明されます。
もしも、圧接した場所で破断した場合適正な圧接がされていないと判断され、同一日に同じ圧接者が圧接したその他の圧接部も不良の可能性があると判断されてしまいます。
つまり、引張試験とは、ガス圧接作業を行った作業員の技量が適正だったかどうかを判断する為の試験というわけです。私は20年以上現場監督をしていますが、今まで引っ張り試験で圧接部が破断をしたという結果は見た事がありません。
もしもそんな事が起きたら、圧接全てやり直しという事なので、考えただけで恐ろしいですね。ちなみに、破断した場所が圧接部以外だった場合を、「母材破断」と言います。
また、最近は引張試験ではなく「超音波探傷試験」といって、鉄筋を抜き取る事なく圧接部に超音波を利用して欠陥がないかを判定する試験方法も導入されています。どちらで試験をするかは、監理者の判断になりますので確認をしましょう。
まとめ
鉄筋工事において、継手工法は必ず必要です。今はガス圧接継手が主流ですが、機械式継手や溶接継手などの工法もあります。それぞれにメリット、デメリットがあるので、ガス圧接以外の工法も覚えておきましょう。