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【新人現場監督必読】建設現場のリスクアセスメントとは

新米くん

危険予知活動(K・Y・K)とリスクアセスメント(RA)の違いがよくわからないっス

どちらも同じだと思うのですが、何が違うんすか?違いを教えて欲しいっス。

こんな悩みを解決します。

本記事の内容

  • KYK(危険予知活動)とは何か
  • RA(リスクアセスメント)とは何か
  • 建設現場におけるKYKとRAの違いは何か
所長

現役ゼネコン現場監督の私がしっかりと解説します!

今回は毎朝行うKYKとRAについて説明します。

最近はKYKからRAへと移行している会社も多いでしょうが、

長年のKYKに慣れてしまっていると、

似たような考えのRAをはっきりと理解できないでいる人もいます。

この記事を読んで違いを理解しましょう。

K・Y・K(危険予知活動)とは何か

K・Y・Kは、K(危険)Y(予知)K(活動)の意味です。わかりやすいですよね。

KYKを行う際のポイント

KYKは以下の手順でポイントを押さえましょう。

その日一日の作業について、考えられる危険要因を探す事から始まります。

  • 作業に潜む危険について短時間で話し合う
  • 危険に気付き、危険を回避する対策を立案する
  • 対策案のうち、現実的で実効性のある案を安全目標とする

危険予知活動は、

現場で作業を開始する前にその作業に伴う危険に関する情報をお互いに出し合って共有化し、

危険のポイントと行動目標を定め、

作業の要所要所で指差し呼称を行って安全を確認し合うものです。

所長

作業内容の理解⇒危険要因の抽出⇒危険回避する為の対策の立案⇒目標設定の順で行おう。

KYKによる効果

  • 危険に対する「感受性」を鋭くする
  • 目標設定する事で作業(行動)要所、要所で「集中力」を高める
  • 自分で自分の身を守る「意識」を持つ

KYKは作業を行うチーム全員で行うものですが、

一人一人の危険回避や安全対策の意識を養う活動でもあります。

所長

危険に対する意識を高めて、日頃から危険ポイントを見抜く力を養おう

危険予知訓練(KYT)を行う

KYKは作業を行うその日の朝に短時間で行うものです。

日頃からKYKに慣れていないと、

短時間で危険要因を探して危険回避を行う為の対策を立てるのに時間が掛かってしまいます。

また、具体的で実効性のある対策を立てるのも簡単にできる事ではありません。

その為に、危険予知訓練(KYT)を行って安全意識を高めましょう。

KYTとは、危険・予知・トレーニングの略です。

一般的には、危険予知訓練シートを活用して行います。

(一般社団法人中小特別教育協会HP参照)

危険予知トレーニングの進め方

  • 1・どんな危険が潜んでいるか
  • 危険予知訓練シートのイラストを見てどこが危険なのかや、その危険要因が引き起こす怪我や事故を想像して意見を出し合う。 
  • 2・これが危険のポイント
  • 発見した危険のどこが重要なポイントになるのか意見を出し合い「危険のポイント」を確認する。
  • 3・あなたならどうする
  • 「危険のポイント」を解決するにはどうしたらよいかを考え、具体的な対策を出し合う。
  • 4・私達はこうする
  • 具体的な対策のうち、「重要実施項目」はどれかを絞り込み、「チーム行動目標」を設定する。

この方法は、KYT基礎4R法と言います。

厚生労働省がKY活動について解説した資料がありますのでこちらから参照下さい。

出典:厚生労働省

所長

危険予知トレーニングを行って、危険に対する知識を広げよう。実際の作業で同じ危険に遭遇した時に、時間を掛けずに対策を考える事ができます。

KYK(危険予知活動)について詳しく解説した記事がありますので、参考にしてみて下さい。

ここをチェック

RA(リスクアセスメント)とは何か

リスクアセスメントとは、

直訳するとリスク(危険)アセスメント(評価)となります。

予想される危険性・有害性を複数抽出し、

それらがどのように危険なのかを評価した時、

最も危険とされる項目についてのリスク低減を行う対策を考えるのが

本来のリスクアセスメントです。

所長

行なう作業において最も危険なポイントが何かを見つけ出し、

その危険のリスク低減を行うのがリスクアセスメントです。

リスクアセスメントを行う際のポイント

リスクアセスメントは、以下の手順で行います。

  • 1.作業における危険性、有害性を特定し、それによる発生のおそれのある災害を抽出する。
  • 2.抽出した危険性や災害について可能性の度合、重篤度、リスクの優先度について見積り(評価)を行う。
  • 3.評価の結果、優先すべき対策はどれか、危険性を低減する為の対策は何か検討する。
  • 4.優先度に対応したリスク低減措置を行う

リスクアセスメントは

最も優先するべき危険が何なのかをリスク評価する事で抽出し、

優先すべき危険を低減する為の措置を目的としています。

作業の中で何が一番危険なのか、

その危険度をどうすれば低減できるかを検討する対策です。

所長

最も危険性の高い災害が発生しないように対策を考える。

それがリスクアセスメント。

リスクアセスメントによる効果

リスクアセスメントを実施する事で得られる効果は以下の通りです。

  • 作業のリスクが明確になる
  • 作業のリスクに対する認識を共有できる
  • 安全対策について、合理的な方法で優先順位を決める事ができる
  • 危険に対する感受性が高まる

リスクアセスメントは、

どんな危険があるかだけではなく、

その危険がどのくらいの頻度で発生するのか、

発生した場合の重篤度はどれくらいか、

災害につながる危険性の中で何を一番優先すべきかなどの具体的な評価をする事が特徴です。

所長

危険性を色んな角度から評価する事で、

リスクを低減させるための対策が見えてくるよ。

リスクの見積り(評価)方法

リスクアセスメントでは、

危険性の評価を行う事が重要です。

評価の方法は以下の3点に注目して行います。

3つの見積り区分

  • 可能性の度合いの見積り区分(頻度)
  • 重篤度(じゅうとくど)の見積り区分(重大性)
  • リスクの優先度の見積り区分(危険度)

それぞれの区分を段階別に評価します。

段階ごとに判定基準を決めて、

どの危険性が最もリスク低減すべきなのかを判定します。

可能性の度合いの見積り区分

可能性の度合判定の基準
極めて高い日常的に長時間行われる作業に伴うもので回避困難なもの
比較的高い日常的に行われる作業に伴うもので回避可能なもの
ある非定常的な作業に伴うもので回避可能なもの
ほとんどないまれにしか行われない作業に伴うもので回避可能なもの
所長

リスクの発生頻度が高く、

リスク回避が困難なものほど可能性の高い度合いになります。

重篤度の見積り区分

重篤度判定の基準
致命傷死亡災害や身体の一部に永久損傷を伴うもの
重大休業災害(1か月以上のもの)、一度に多数の被災者を伴うもの
中程度休業災害(1か月未満のもの)、一度に複数の被災者を伴うもの
軽度不休災害やかすり傷程度のもの
所長

リスクによって発生する災害の被災者が、

どのような影響を受けるかの区分です。当然死亡災害が一番重篤度が高いです。

リスクの優先度の見積り区分

可能性の度合いと重篤度の区分から数値化して優先度を設定します。

下表の点数や優先度の区分はあくまで一例です。

リスク優先度 取るべき措置
30点以上・直ちにリスク低減措置を講ずる必要がある。
・措置を講ずるまで作業停止する必要がある。
・十分な経営資源を投入する必要がある。
10~29点・速やかにリスク低減措置を講ずる必要がある。
・措置を講ずるまで使用しないことが望ましい。
・優先的に経営資源を投入する必要がある。
10点未満・必要に応じてリスク低減措置を実施する。
所長

優先度の区分を簡単に言えば、

「高」がすぐ対処する「中」が早めに対処する「低」が必要なら対処するといった感じです。

考えられるリスクのうち、優先度の高いものからリスク低減措置を行います。

リスク低減措置の検討・実施

優先度が高いと評価されたリスクから、

リスク低減措置を検討します。

低減措置の検討には優先順位があります。

リスク低減措置内容の検討の優先順位

1危険な作業の廃止・変更危険な作業の廃止・変更、危険性や有害性の低い材料への代替、より安全な施工方法への変更等
2工学的対策ガード、インターロック、局所排気装置等の設置等
3管理的対策マニュアルの整備、立ち入り禁止措置、ばく露管理、教育訓練等
4個人用保護具の使用上記1~3の措置を十分に講じることができず、除去・低減しきれなかったリスクに対して実施するものに限られます

出典:厚生労働省

所長

優先順位の順に具体的な実施案を検討します。

優先順位1で対策が出来れば一番いいですが、

無理なら2、3,4へと移行して対策を検討します。

リスクアセスメントの記録・見直し

実施したリスクアセスメントが適切だったか、

改善が必要かどうかを再度検討します。

必要に応じて実施手順の見直し、

優先順位の引き上げなどを行ってください。

また、内容を改善する際は、

作業者の意見を取り入れることも必要です。

リスクアセスメントは、

リスク低減措置の実施で終わりではありません。

特定したリスク、

低減措置の内容などを全て管理することが重要です。

記録したものをきちんと整理し、

誰もがいつでも内容を確認できるようしておきましょう。

所長

リスクアセスメントは実施したらおしまいではなく、

改善や再検討を行う事が望ましいです。

建設現場におけるKYKとRAの違いは何か

KYKとRAは厳密に言えば違いがあります。

しかし、建設現場で使われる手法としては

RAがKYKに近い使われ方をしています。

その為にKYKとRAを混同してしまったり、

違いが分かりにくくなってしまっているのです。

  • KYKは、危険ポイントを見つけて対策を検討し目標を決める(シンプルでわかりやすい)
  • RAは危険を数値化し、最も危険度の高い項目に絞って対策を検討する。
  • RAは数値化したリスク(危険度)を低減させる為の対策を検討し、リスク低減させる事が目的。
  • 建設現場では、KYKに「危険度の数値化」を加えたものをRAとする場合もある。
所長

ここでは建設現場で用いられるKYKとRAの考え方の違いを説明します。

KYKの記入方法

KYKの場合、危険のポイントを複数検討します。

そして、それぞれどの様な対策を行うのかを決めます。

記入用紙は3項目ほど記入できるようになっています。

理想は3項目危険ポイントを見つけ、

その対策を考えると良いです。

NO.       危険のポイント             私たちはこうする       
1○○する時、○○なので、○○になる。○○を○○して○○する。
2
3
所長

危険ポイントを決めて、その対策を考える。

内容は具体的に書くほど対策も具体的に出来ます。

RA(リスクアセスメント)の記入方法

RAの場合、まず予想される危険性・有害性を複数検討します。

次にその危険性・有害性について危険度を評価します。

ここがKYKと違う所ですが、

更にもう一点確実に違うのは、

検討した複数の危険性・有害性の内、

最も危険度の高かった項目に対してだけ対策を考えるという点です。

これがリスクアセスメントの最大の特徴です。

NO. 予想される危険性・有害性 (具体的に)            頻 度 重大性 評 価 危険度
○○する時、○○なので、○○になる
△△の時、△△なので、△△になる
□□の時、□□なので、□□になる
NO.対策(だから私たちはこうする)頻 度重大性評 価危険度
所長

まず、予想される危険性・有害性を3つ考えよう。

評価の方法は色々ありますが、

一般的には頻度区分(1点・3点・5点)×重大性(1点・3点・5点)=評価点とする場合が多いです。

災害発生の可能性(頻度)✕災害の程度(重大性)=評価点

災害発生の可能性(頻度)数 値災害の受傷の程度数 値
可能性がきわめて高い ✕ 死亡・障害を伴う災害(重大)
可能性がある休業4日以上の災害(重い)
可能性が低い休業3日以内の災害(軽度)

危険度(リスクレベル)の区分と評価点

    危険性の評価基準     評 価  危険度 
・非常に危険度が高い(最優先)25
・危険度が高い(優先)15
・中程度(普通)9・5
・危険度が低い(状況を見て対策)3
・危険度が軽微【必要に応じて対策)1
所長

次に予想される危険性・有害性を評価して危険度を求めます。

予想される危険性・有害性を評価する

上記の表を参考にして危険度を求めます。頻度×重大性=評価→危険度

NO. 予想される危険性・有害性 (具体的に)             頻 度 重大性 評 価 危険度
○○する時、○○なので、○○になる25
△△の時、△△なので、△△になる393
□□の時、□□なので、□□になる332
NO.対策(だから私たちはこうする)頻 度重大性評 価危険度
所長

1番の予想される危険性・有害性が危険度5になりました。

なので、1番についての対策を3つ考えます。

危険度が最も高い項目のみ対策を考える

危険度の最も高い項目について、3つ対策を考えましょう。

NO. 予想される危険性・有害性 (具体的に)              頻 度 重大性 評 価 危険度
○○する時、○○なので、○○になる25
△△の時、△△なので、△△になる393
□□の時、□□なので、□□になる332
NO.対策(だから私たちはこうする)頻 度重大性評 価危険度
○○を○○して○○する
△△を△△して△△する
□□を□□して□□する
所長

さあ、もうひといきです。最後に対策をした事で頻度、重大性を再評価します。

対策を行った結果を再評価する

リスクアセスメントは

リスク(危険度)を低減させる事が目的なので、

対策を行う事で危険度が下がらなければ意味がありません。

対策を行うことで災害が起こる可能性を低減させ、

災害時の重篤度(重大性)を低減させる事が重要です。

NO. 予想される危険性・有害性 (具体的に)              頻 度 重大性 評 価 危険度
○○する時、○○なので、○○になる25
△△の時、△△なので、△△になる393
□□の時、□□なので、□□になる332
NO.対策(だから私たちはこうする)頻 度重大性評 価危険度
○○を○○して○○する1
△△を△△して△△する39
□□を□□して□□する
所長

対策を行った事で危険度5が3以下になりました。

ただし、危険がなくなったわけではないので安心してはいけません。

このように、

リスクアセスメントは数値化する事によって危険の度合いを把握でき、

対策についても数値化によって効果の度合いが把握出来ます。

KYKではこの取組がないので、

現在ではRAを導入している建設現場が増えてきています。

ただ、きちんと理解をして取組まなければあまり意味がないので、

正しく理解した上でリスクアセスメントを行うようにしましょう。

KYKとRAならどちらの対策がよいか

結論から言えば、

KYKもRAも同じ目的で使われている手法なので

どちらでも対策としては有効だと考えます。

極端な違いがないので混同して覚えてしまったり、

勘違いして覚えてしまう人がいるだけなので

しっかりと理解をして活用する事が大事です。

気を付けるべきは、

KYKもRAも形骸化(けいがいか)させてしまってはいけないという事です。

そういう意味ではKYKのほうが形骸化しやすいと言えますが、

RAについても慣れてしまえば形骸化してしまいます。

そうならない為の取組が必要となりますので、

現場で時間を作って改めてKYKとRAについて

指導・教育をする事をおすすめします。

きちんと理解をして作業や安全対策に取り組む事で

怪我や事故は低減させる事ができます。

起きてしまってからは取り返しがつかないので、

事前に正しい知識をつけましょう。

所長

KYKでもRAでも正しく理解して正しく活用すれば有効な手段となります。

まとめ

KYKもRAも一日の作業を安全に行うためのツールです。

現場から怪我や事故を減らす一番の近道は、

一人一人が危険や安全に対する意識を正しく持つことです。

安全設備や工法でリスクを低減する事は物理的に可能ですが、

「ヒューマンエラー」は個人の意識が重要になります。

もちろん誰しも怪我や事故をする為に作業をしているわけではありません。

しかし、危険や安全に対する意識を常に持って作業をしているかと問われた時はどうでしょう。

時間に追われ、ノルマに追われ、

忙しい時は特に注意が散漫(さんまん)になってしまうのではないでしょうか。

そういう時こそ、深呼吸です。

怪我や事故をしてしまっては時間もノルマも全て無意味になってしまいます。

私たちが日頃行っている仕事は、

常に危険と隣り合わせであるという自覚を持つ事が大事です。

あなたの帰りを待つ家族が、

週末遊ぶ予定の友達が悲しむ姿は見たくないですよね。

人間は一人では生きられない生き物です。

あなた自身だけではなく、

あなたの周りの人達の為にも危険や安全に対する意識を向上していきましょう。

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