建設会社や建設現場を題材にした小説ってありますか?なるべく最近の小説がいいです。
こんな相談にお答えします。
本記事の内容
- どんな人におすすめの本か
- 小説:残業禁止 荒木源著のストーリー解説(途中まで)
- 本作品読了後の感想
現役ゼネコン現場監督の私がご紹介します。
ゼネコンの現場監督を題材にした小説はいくつかありますが、
真面目にかつコミカルに描いた小説は少ないと思います。
荒木源著の「残業禁止」は、
まさに今建設業界が抱えている「働き方改革における残業」についてをテーマにした小説です。
建設業界を知らない人でもスムーズに読み進められる小説です。
建設業界の事を知っている人が読むと「あるある」がふんだんに盛り込まれている為、
思わずうなずきながら読んでしまいます。
これから建設業に携わる人、
今まさに建設業界で働いている人、
現代の現場監督がどんな悩みを抱えているかを知りたい人に読んで欲しい作品です。
残業禁止なんて、めっちゃいいじゃないですか!
まだ若い君にはそう思えるかもしれないけど、
環境や体制を構築せずにただ禁止と言うのは無謀としか言えないよ。
その理由がこの小説には詰まっています。
どんな人におすすめの本か
こんな人におすすめ
- 建設会社(ゼネコン)に勤務の人(特に現場監督)
- 設計事務所勤務の人
- 建設現場で働く職人さん(特に職長クラス)
- リアルな建設現場を知りたい人
- 働き方改革に疑問を持っている人
- 身内や知り合いが建設現場で働いている人
荒木源著「残業禁止」のストーリー(途中まで)
成田和正46歳。
ゼネコン「ヤマジュウ建設」の現場監督。
15階建、地下2階の総工費20億越えのホテル建設現場の現場所長。
現場には成田所長の他に、
副所長の大田久典、所員の浅田しのぶ(30代半ば)、
熊川健太(34歳)、砂場良智(20代後半)の4人の部下と
パート事務員の近藤治美。浅田しのぶは女性現場監督。けんせつ小町だ。
「働き方改革」によって
会社から部下の残業時間が多くならないように釘を刺されている成田所長。
しかし、実際は会社にはだんまりで残業を行うのが現状だった。
そうでなくては現場が成り立たないからだ。
唯一、熊川健太はイクメン社員として自ら残業を一切しないので例外だったが、
他の所員の残業が増えるのは熊川が要因でもあった。
激務の建設現場で会社の要求に応えるだけでも苦労する中、
施主の要望で設計事務所から無理難題な変更を告げられる成田所長。
急遽工程の見直し、
新たな図面の作成など予定外の仕事が増えて更に激務になった矢先、
副所長の大田が脳梗塞で倒れてしまう。
残されたメンバーで仕事をするには無理がある為、
会社に人員の補充を申し出た成田所長だったが
会社が投入したのは入社1年目の高塚宏(25)だった。
当然、戦力どころか負担にしかならない社員を抱えながらも奮闘する現場監督たち。
大田が倒れた事で会社から更に強制的な残業カットを言い渡され、
まともに仕事すらさせてもらえない環境で工事を進める事に。
新人社員の尻拭い、近隣からの苦情やトラブル、作業のトラブル。
トラブル続きの現場で、
ある日新人現場監督の高塚が現場で事件を起こす。。。
た、高塚君は何をしたんですか?
気になるなら読んでみよう。
本作品読了後の感想
この物語は総工費20億越えという大きな建設物の現場を舞台としていますが、
現場で起こる数々のトラブルは中小企業のゼネコンの現場でもよくあるような内容です。
著者がネタ元を明かす事はないでしょうが、
絶対にリアルな現場の実体験を反映させているとしか思えないほどリアルです。
よくドラマなどで建設現場のシーンが描かれる事がありますが、
「そんなわけないやろ!」と、おもわずツッコんでしまうシーンは多々あります。
しかし、この小説で繰り広げられる現場は実在するんじゃないかと思うような現場です。
建設現場と「働き方改革の矛盾」「若手社員の教育の難しさ」「思い通りに進まない現場」。
この小説は、主人公は成田所長ではなく
「チェリーホテル・横浜ベイサイドプロジェクト」という現場そのものだと思います。
全ての物語が現場を中心に進み、
現場と現場に関わる全ての人達とで繰り広げられる協奏曲、
いや、狂騒曲と言ってもいいかもしれません。
鉄筋工、型枠工、鳶工などの職人さんも登場し、
職人さんと現場監督との時には攻防があったり、
時には仲間意識があったりとリアル過ぎます。
私は中小企業のゼネコンなので、
この小説の中に登場する「ヤマジュウ建設」よりは小さな会社です。
なので会社の体制や組織形態は少し違いますが、
それでも十分共感出来ました。
正直、私が現場監督だからこの小説の面白さを体感できているだけかもしれませんが、
建設現場を知らない人にも読んでもらいたい作品です。
これを読んだら立派な現場監督になれますかねー?
現場監督の仕事が見えるという意味では、勉強になるかもね。
まとめ
建設現場がこの小説のような現場ばかりと思わないで頂きたいのですが、
こういう現場もあるのは事実です。建設現場では予期せぬ出来事がつきものです。
当事者や建設中の間はただただ必死に仕事をするだけですが、
終わってみると笑い話になる事が多かったりします。
もちろんこの小説のような現場に配属になったら私自身もゾッとしますが、
それは建設現場自体が悪いわけではありません。
この小説を読んでもらうと分かると思いますが、
問題は建設業界にある根本的な問題が多いのです。
人材不足、工期不足、矛盾する体制などなど。
それらが解消された建設現場は、とても楽しい場所だと思います。
この小説はあくまでフィクションですが、
建設現場のリアルが垣間見えると思います。是非、ご一読を。(笑)