KYK(危険予知活動)の意味は知ってるけど、実際にどうやって指導すればいいかわからないっス。
こんな悩みを解決します。
本記事の内容
- KYKの実践方法解説
- 危険ポイントの見つけ方
- 危険ポイントの書き方
- 対策の書き方
- KYKの教育方法解説
- KYT基礎4R法とは
- KYT基礎4R法を使用した教育手順
現役ゼネコン現場監督の私がしっかりと解説します!
この記事を読むと
建設現場で毎日行うKYKの実践方法を具体的に解説します。また、指導教育方法についても解説をしますので、この記事を読むと建設現場のKYKの方法とまだ理解が浅い人への教育が出来る様になります。
KYK(危険予知活動)の実践方法解説
イラストを参考にしてKYKの実践方法を解説します。
さあ、上のイラストを見ながらKYKを実践してみよう。電動丸ノコを使用する作業の危険ポイントは何かな?
これなら簡単です!「電動丸ノコ使用時に手を切る」っス!
はい、失格!
し、しし、しし、失格!?どうしてっスか?
「電動丸ノコ使用時に手を切る」が危険ポイントなら、電動丸ノコは使用禁止にしないといけません。
何言ってるんスか。使用禁止になんて出来るわけないっス。
だって電動丸ノコ使ったら手を切るんでしょ?
そりゃあ、よそ見をしたり手元を見てなかったりしたら,手を切るかもしれないっスよ!
そう!それだ!
は、はい?何がっスか?
電動丸ノコを使うから手を切るんじゃなく、使用時に手元の確認をしなかったり、よそ見をするから手を切る恐れがあるんだよね?
あっ!そういう事っスか!
ポイント
KYKで重要なのは、危険を正しく理解する事です。電動丸ノコは作業をする為に必要な工具です。しかし、使い方などを間違える事によって、それが事故やケガの原因になったりします。悪いのは電動丸ノコではなく、「間違った行動」にあるという事を理解しましょう。
危険ポイントの見つけ方
- 怪我や事故を起こす引き金となる原因が何かを考える
- 何が「ある」と危険なのか、何が「ない」と危険なのかで考える
- 何が「ある」と安全なのか、何が「ない」と安全なのかでも考える
- 「~が、~なので、~となる」の様に具体的な表現で考える
危険ポイントの見つけ方を参考にしてイラストにある危険ポイントを探してみよう!
- 手元をよく確認して作業しないと危ない
- 保護具や保護メガネを着用してないから危ない
- ベニヤ板がうごいたら危ない
- 丸ノコの刃が引っ掛かると危ない
うん!目の付け所はいいと思うよ。でももっと具体的にしよう!
具体的な危険ポイントの書き方例
- 作業時によそ見をして手元を確認せずに切断すると手を切る
- 切断した木材の切り粉が目に入ってケガをする
- 切断する資材がきちんと固定されていないと切断時に動いてケガをする
- 急いだり力を入れすぎて切るとキックバックが起こり、丸ノコがはねてケガをする
なるほど!具体的に書くのがポイントなんスね!危険ポイントだけに!
はいはい。では、次はそれぞれの危険ポイントの対策を考えよう!
対策(わたしたちはこうする)の書き方例
- 丸ノコ使用時、手元をよく確認して手を切らない様に作業する。
- 丸ノコ使用時、木材の切り粉が目に入らないように保護メガネを着用して作業する。
- 丸ノコ使用時、材料が動かない様に材料を手で押さえて作業する。
- 丸ノコ使用時、急いだり力を入れすぎないように適正使用で作業する。
それぞれの対策はこんな感じになります。
具体的に書くって結構大変なんスね。
対策を書く時の注意ポイント
危険ポイントを具体的に書くのと同じ様に、
対策についても具体的に書く事が大事です。
例えば、今回の対策の1番については対策として、
「保護メガネを着用して作業する」だけでも対策としての意味は通じます。
わざわざ危険ポイントで書いた「木材の切り粉が目に入る」
という所まで対策で書く必要があるのかと思うかもしれません。
しかし、対策だけを読んでも「何のために何をするのか」がわかる事が大事です。
対策も具体的に書くように心掛けましょう。
危険ポイントも、対策も具体的にわかりやすく書こう。KYKを行うのはその日の安全だけでなく、あなたの安全意識の向上の為でもあります。
目標設定(安全目標)
KYKの場合最後にチーム目標を決め、
指差し呼称や指差し唱和(声に出して目標を言う)をする現場もあります。
KYKの記入用紙にも「チーム目標・安全目標」を記入するタイプがありますが、
基本的には対策(わたしたちはこうする)の内容の一番重要な項目を目標とする事が多いです。
新しく目標を考えるのではなく、
対策にある重要な項目を目標としましょう。
今回のイラストのKYKで言うなら「手元確認よし!」と唱和しましょう。
KYKの教育方法解説
次は、現場監督の立場から職人さんにKYKを教育する方法の解説です。
職人さんに指導・教育する時はKYT基礎4R法(危険予知トレーニング基礎4ラウンド法)
の考え方を活用しましょう。
(出典:厚生労働省)
KYT基礎4R法とは
- 1ラウンド:現状把握=どんな危険が潜んでいるか
- 2ラウンド:本質追求=これが危険のポイント
- 3ラウンド:対策樹立=あなたならどうする
- 4ラウンド:目標設定=わたしたちはこうする
KYT基礎4R法とは、
KYKを4つのラウンドに分けて段階的に考える手法です。
段階的に考える事で頭の中で整理しながら対策が立てられるので、
まだKYKに慣れてない人にとっては有効な手法となります。
では、KYT基礎4R法を活用した教育方法をご紹介します。
KYT基礎4R法を使用した教育方法
1ラウンド:現状把握
まず、作業の中に潜む危険を見つけよう。この時は箇条書き程度でもいいので思いつくものを書き出してみましょう。
現状把握の時の潜んでいる危険の例
- 足場から転落する
- 脚立から転落する
- 丸ノコで手を切る
- カッターで手を切る
- 重機と接触してケガをする
- 開口部から落ちる
- 吊り荷が落下する
まずはシンプルに危険について考えます。
どうなると事故やケガに繋がるのかと考えましょう。
上記のように事故・ケガの原因を書き出します。
いきなり文章にする必要はありません。
箇条書きでもいいので潜んでいる危険を見つけましょう。
2ラウンド:本質追求
次に先ほどの潜んでいる危険と作業の関連性を考えて、何が危険なのかを具体的に考えましょう。
本質追求時のこれが危険のポイントの例
- 高所作業時フルハーネスを着用していない。安全フックの使用をしないと転落する。
- 脚立のバランスが悪い。またぎ作業や天板作業でバランスを崩すと転落する。
- 工具に問題がある。保護カバーがない。手元を見ていないとケガをする。
- カッターの刃の向き、刃の先に手があると手を切る。手元を見ていないと手を切る。
- 重機作業の近くで作業をすると接触する。重機の死角に入ると接触する。
- 開口部に気付かずに落ちる。開口部付近で足元、周囲を確認しないと転落する。
- 吊り荷のバランスが悪いと荷崩れする。合図を明確にしないと吊り荷が誤った動きをする。
ここでは、潜んでいる危険につながる原因を洗い出します。
潜んでいる危険に対して「なぜ事故やケガが起こるのか」
の原因があるはずです。
それらを具体的にイメージしましょう。
3ラウンド:対策樹立=あなたならどうする
潜んでいる危険と危険ポイントから導かれる対策を具体的に考えましょう。
対策樹立時のあなたならどうするの例
- 足場での高所作業時フルハーネス着用及びフック2丁掛けにて作業し、必ずフックを使用して作業する。
- 脚立作業時、足元の安定確保及び開き止めの確認、またぎ作業、天板作業は行わないで作業する。
- 工具の始業前点検、安全カバーの確認をし手元をよく確認して作業する。
- カッター使用時刃の向きと手元をよく確認して作業する。
- 重機作業時、重機の死角に入らない。立入禁止区画内に立入らないように作業する。
- 開口部の近くで作業する場合は後ろ向き作業はせず、足元周囲の確認をして作業する。
- 玉掛作業時、吊り荷のバランスの確認を地切りで確認し合図を明確に行って作業する。
ラウンド4:目標設定=わたしたちはこうする
今回は対策を一つずつしか考えてないので上記の対策が目標設定になります。KYK実施時には複数の危険ポイントや対策が出る場合があるので、その時はその中から一番重要な対策を目標に設定しましょう。
教育方法のまとめ
このようにKYT基礎4R法を利用すると、
段階的にKYKが出来る為対策が立てやすくなります。
いきなり対策を文章としてまとめるのは慣れていないと難しいので、
「潜んでいる危険(事故、ケガの原因)」+「危険ポイント(なぜ起こるのか)」=「対策方法」
という考え方で行いましょう。
最初は違和感のある文章でも構いません。
何度もやっていく内に慣れてくると思いますので、
具体的に書く練習をしていきましょう。
簡単に考える方法
事故・ケガの原因+なぜ起こるのか=対策方法
例
足場からの転落+安全フックをかけ忘れる=高所作業時、足場から転落しないように安全フックを必ずかける
どんな事でも、はじめから100点はとれません。初めのうちは具体的な内容がわかればそれで充分です。
はい!早く100点のKYKが出来る様に頑張るっス!
まとめ
今回は、KYKについて詳しく説明してみました。
KYKは毎日行う安全対策ですが、
ただ単に用紙に記入すればいいというものではありません。
KYKを通じて、
安全意識の向上や現場の危険を察知する習慣を付ける事が出来ます。
建設現場から一つでも事故や怪我をなくすには、
このような日頃から行う安全対策をどれだけ充実させて行っているかが重要です。
安全に対する意識がケガや事故を防ぐ事を忘れないようにしましょう。
この記事を読んで、KYKへの理解が深まれば幸いです。