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若手現場監督専用

何故、現場監督の休みは少ないのか。徹底解説

所長

この記事は2024年働き方改革以前に書かれたものです。

西暦2000年からもう20年以上が過ぎています。皆さんにとって、「昔」とはいつの事でしょうか。私自身、今は40代で、新人、若手の頃は20年ほど前の話です。その私が思うに、私が新人だった頃と今では、社会環境は全然違うと感じています。

私が新人だった頃は、謎のサービス残業、遅くまで仕事をしたがる職人さん(会社の上司)、それが当たり前の建設現場でした。今はどうでしょう。

働き方改革、職人さんのサラリーマン化、効率を求める会社。時間を掛けずに成果を出す事を要求される時代になりました。では建設現場は、うまくその波に乗っているでしょうか。少なくとも、中小企業のゼネコンは波に乗るどころか波にのまれてしまっていると思います。

確かに、遅くまで仕事をする職人さんは減ったかもしれません。でも、結局は工期に追われて遅くまで働かなくてはいけない現場は沢山あります。残業だけではありません。

土曜、祝日に仕事をするのは、建設現場ではまだ当たり前です。会社は休みなのに、現場は動いているのです。会社は「働き方改革」を推進し、会社の休みは土曜日もしっかりと取るようになったのに、建設現場はしっかりと働いています。

建設現場の体制は昔とあまり変わらないのに、会社は「働き方改革」を推進するという矛盾が生じています。では、何故そんな事になっているのでしょうか。

所長

現役ゼネコン現場監督の私がしっかり解説します!


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工期の設定時に土曜日を休みにしていない。

建設現場の工期は、おおよそ設計段階で決まっています。当然、建物を建てる発注者(施主)は、建物がいつ完成して、いつから住んだり使用したり出来るのか知りたいものです。

故に、ある程度のスケジュールは早い段階で決まるものです。実際に工事を受注した建設会社が、「これくらいの工期が掛かりますから、完成は○○月○○日ですね」などと言えません。

見積りをする段階で、設計事務所から「工期は○○月○○日~○○月○○日までです」と伝えられます。その条件で見積りを依頼されるのですから、見積りをして受注した以上、その工期を守るのは当たり前です。なので、ここを変えないとダメなのです。

一番最初に設定する工期を考える時に、土曜日と祝日を休みに設定しておけばいいのです。すごく簡単な話のように聞こえますね。でも、未だにそんな現場は少ないと思います。(中小企業レベルなので、大手さんの現場はわかりません)

建設現場の工期(マンションの場合)は、3階建てでも半年以上必要です。マンション建設の工期を簡単に割り出す方法として、階数+2ヶ月という考えがあります。10階建てのマンションなら、12カ月で完成。みたいな。

しかし、この算定方法は昔の話です。現在は少なくとも階数+3ヶ月~4ヶ月というのが相場です。つまり、昔よりも今の方が工期は長くはなっているのです。でも、土曜、祝日は仕事です。つまり、過剰な残業が出来なくなったり、職人さんの数が減ったり高齢化したりなどの理由で、昔よりも工期が掛かるようになったのです。

そこに更に土曜祝日を休みにすると、どうなるでしょう。10階建てのマンションの工期を13ヶ月と設定した場合、そこに13ヶ月分の土曜日と祝日を工期に足してみましょう。祝日は1年で16日です。

その内、元旦やゴールデンウィークなどの現在の現場でも休みとしている祝日を除くと、役10日ほどです。土曜日は年によって変わりますが、おおよそ1年で50日程度です。つまり、土曜、祝日を休みにすると、1年で約2ヶ月以上工期が延びるわけです。

別に延びたっていいじゃん。と、思いませんか?私は、思います。しかし、何故か建設現場では工期の設定が未だに昔の考え方のままなのです。

職人さんは、働いた日数、成果が給料になるから。

現場監督や下請け業者の営業マンや担当者は、基本的にサラリーマンがほとんどです。しかし、下請け業者の会社によっては家族経営だったり、個人経営で職人をしている人もいます。

サラリーマンであれば、会社が決めた出勤数を働けばお給料が貰えます。仮に仕事が少なくなって、暇な日が増えたとしても固定給は貰えます。それがサラリーマンです。

ただ、個人経営の職人さんは、働かなくてはお給料は稼げません。暇な日が多ければそれだけお給料も減ります。建設現場は、サラリーマンと個人経営者が混在する場所なのです。

私はサラリーマンの現場監督なので、是非とも休みが欲しいと願っています。(世間一般的な普通の休みで十分ですが)しかし、職人さんはそうはいかないのです。何故なら、職人さんは現場を渡り歩いて仕事をこなさないといけません。

ここが終わったら次の現場、そこが終わったらその次の現場へ。工種や規模にもよりますが、1日でその現場の仕事が終わる職人さんもいます。職人さんは、自分の仕事が毎日毎日うまく舞い込んでくるとは限らないのです。

そうなると、職人さんにとって土曜日や祝日は貴重な日になるのです。

例えば、来週の月曜日に違う現場の仕事があるとして、今の現場の仕事が終わるのが土曜日仕事が出来れば今週中に終われるとします。職人さんとしては、土曜日に仕事をして月曜日の現場へ行きたいですよね。

それを土曜日休日にしたら、月曜日に次の現場へは行けなくなります。じゃあ、火曜日に行けばいいじゃん。って思いますよね。でも、そんなわけにはいかないのです。

現場とは、ずっと先まで予定が決まっているので、一日予定がズレると調整が大変になってきます。なので、その職人さんが月曜に行けないのであれば、現場は他の職人さんを探します。

月曜日からの現場の仕事が5日間分の仕事量だとしたら、それを逃すと5日間仕事がない状態になってしまいます。今まで働けるはずの土曜日や祝日が働けなくなると言う事は、職人さんにとっては年間60日分の給料が減るという事になります。

更に、現場を渡り歩く為の調整用の日数が減ることで、やりくりが大変になってしまします。建設現場は、職人さんがいて成立する仕事場です。職人さんの都合を優先して考えるのは、致し方ないのかもしれません。

もちろん、このハードルを乗り越える為の手段がないわけではありませんが、ここも未だに手付かずです。

日数に余裕がある方が現場管理は楽だから。

ここまで聞いて、どう思いますか?「そんなに休みたいなら、決まった工期の中で休みを決めて休んだらいいじゃん」と、思った人もいるかもしれません。「暗いと不平を漏らすより、進んで灯りを点けましょう」

の考え方ですね。そうなんです。休みたいなら、現場を管理している現場監督が「今週の土曜日は休み!」って、言えばいいんです。でも、現場を管理すればするほど、それは言いにくくなるのです。

何故ならば、工期が適正にある現場で休みを増やすという事は、工期を減らすという事になるからです。

建設現場にとっての1日は、ドラゴンボールの「精神と時の部屋」の1日くらい重要なのです。

その一日を減らして休みを取るという行為は、自分で自分の首を絞める行為と同義です。

とてもじゃないですが、気分よく休む事ができません。

これはもう職業病なのかもしれませんが、いい仕事をしようと思ったら日数がある方がいいのは当然なのです。

余裕のある現場管理は、現場に品質、安全、において好影響を与えます

しかし、コストについては悪影響なのかもしれませんね。

無理をしてまで休みを増やすという方法は取れないというのが、現場監督の心情なのだとご理解ください。

日数が掛かる=経費がかかると判断するから。

先ほど、余裕のある現場管理は、コストについては悪影響だと言いました。その理由がコレです。工期が延びるという事はその分のコストが追加されるという事です。わかりやすいコストから言うと、人件費ですね。土曜、祝日を休みにすると、1年で2ヶ月工期が延びると説明しましたね

つまり、1年で現場監督の人件費が2割弱程度増加するという事です。それを加味して工事金額に上乗せ出来ればいいのですが、発注者(施主)の立場になるとどうでしょう。「工期は延びるし工事金額も増えるだって?そんな建設会社には頼みたくないな」と、言われてしまうのではないでしょうか。

それに、人件費だけの問題でもありません。現場事務所や事務備品、現場設備のリース材なども工期が延びればその分のリース代が上乗せされます。工期短縮は、経費削減とイコールの関係にあるのです。早く終われば安く出来る。早く安く出来れば発注者(施主)に喜んでもらえる。

それが我が社の強みです。ガッハッハッハ。社長の高笑いが聞こえますね(笑)結局はお金が絡んできてしまうのです。おそらく、そこが一番の問題点なのです。

ビジネスとして考えると、この建設現場の休日問題は会社の存続に直結するかもしれないのです。突然土曜日を休日にしたら、路頭に迷う職人さんが出るかもしれません。建設会社もコスト増となり、その分を発注者から貰えないとなれば、負担する事になります。

利益が減り、給料が減るかもしれません。何よりも、今までよりも工期が掛かり、工事金額も増える建設会社を選んでくれる発注者(施主)がいるでしょうか。このジレンマが、今の建設業界に暗雲をもたらしているのです。

資本主義の競争社会において、このリスクを背負ってまで建設現場に休みをもたらす建設会社は少ないと思います。大手ゼネコンでさえ成しえてないのですから。

まとめ

現場が休みに出来ない以上、現場監督は休む事は出来ません。人手不足もあり、少人数で現場を運営している建設会社は少なくないと思います。しかし、休みが満足に取れない建設会社に、今の若い世代が喜んで就職するでしょうか

この負のスパイラルを抜け出さない事には、建設業界の未来は危ういと感じます。私は、批判がしたくてこのテーマを掲げたのではありません。建設会社、建設現場はとても面白い仕事です。

環境や仕事のスタイルも進化し、働きやすい環境だと思っています。是非、この楽しい仕事を色んな人に体験して欲しいです。その為には、今や常識となっている土曜日(祝日はもっと当たり前)を休日とする働きを、邁進させていかなくてはいけないと思っています。

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