若手の現場監督の成長が遅いと思っている会社や上司先輩の方々。何故成長が遅いかを考えてみましょう。
本記事の内容
- 現場監督が成長できる時間が確保されていますか?
- 現場監督が成長出来る経験をさせていますか?
- 現場監督を教育する側の問題を解決出来ていますか?
現役ゼネコン現場監督の私がしっかり解説します。
X(旧Twitter)にて現場監督あるあるをイラストや漫画で紹介しています。
こちらまでどうぞ→ X(旧Twitter)(@shochou2022)
20年以上前の現場監督は、中小企業のゼネコンであれば3~4年程度の経験で現場所長となっていまいた。
今は、3~4年の経験ではまだまだ新人レベルです。
何故、昔はそんなにも早く現場所長になれたのでしょうか。
そして、何故今の若い世代の現場監督は、成長が遅いと言われるのでしょうか。
現場監督が成長できる時間が確保されていますか?
現代
- 週休二日制や残業時間の削減で成長の時間もカットされている
- 書類や雑務が多く、本来の実務の時間が確保できない
- 教える側の時間が確保できない
昔
- 土曜日、祝日は仕事、残業は当たり前で時間があり過ぎるくらいあった
- 書類などが少なく、実務に集中できた
- 上司・先輩にもある程度余裕があった
どんな仕事でも、
時間を掛けて仕事を行った方がよく理解出来、成果もあがるものです。
昔は夜に残業をするのは当たり前で、職人さんも夜遅くまで働いていたものです。
職人さんが帰らなければ、現場監督も帰れません。
現場所長は仕事はいくらでもあるかもしれませんが、若い現場監督に残業するほどの仕事はありません。
ならば若い現場監督は帰れるのかというと、そうではありません。
現場の戸締りをするのは若い現場監督の仕事なので、夜遅くまで待たなくてはいけないのです。
職人さんが帰ったとしても、所長の仕事が終わらなければ帰れないなんて事もありました。
今の現代では考えられないかもしれませんが、20年以上前はこれが許された時代でした。
つまり、若い現場監督は夜に時間がたっぷりとあったのです。
なので、上司から課題を与えられたり自分で仕事を見つけたりして夜遅くまで仕事や勉強をしていたのです。
時には休みを返上して仕事をしたり、家に仕事を持ち帰ったりと、仕事漬けの日々を送っていました。(経験談)
そんな環境で仕事をしていれば、仕事を覚えるのも早くて当たり前です。
現場監督の仕事は、大きな意味でとらえれば、一通りのやり方をマスターすればあとは応用でこなせるものです。
なので、やり方を一巡するまで覚えれば現場所長になれてしまうのです。
しかし、現代の若手現場監督の環境はどうでしょうか。
働き方改革。
ハラスメント対策。
個性の尊重。
それらは、本来社会や社員にとってとても有意義なものです。
しかし、建設現場においては、人材の育成を妨げる要因にもなってしまっていると私は感じます。
こんな事を言うと、「昔の古い考えの人だ。社会不適合者だ」と言われてしまうかもしれません(笑)
もちろん、だからといって昔のような事をした方がいいとは私も思っていません。
今となってはいい思い出かもしれませんが、当時、何度も会社を辞めようと思ったことはあります。
私が言いたいのは、昔と今では与えられる時間も違えば、経験出来るチャンスも少ないという事です。
そんな状態で成長など出来るはずがありません。
今の若い現場監督に必要なのは、成長できる時間と機会を確保することです。
課題・対策
- 勤務時間外に教育の時間を作る(研修・勉強会)
- 書類整理などの単純作業を効率化させる
- 適切な教育係を配置又は任命する
個人的には、昔より圧倒的に若手の学ぶ時間が少なくなっていると思います。
時間が作れない以上、当然成長はゆるやかになってしまします。
現場監督が成長出来る経験をさせていますか?
現代
- 若手には責任のある仕事を簡単に任せられない
- 予算や工期の関係で失敗が許されないので若手に任せられない
- 手取り足取り面倒を見る時間が上司にない
昔
- 若手に挑戦させるのが当たり前だった
- 失敗してもリカバリーできる余裕があった
- 若手に挑戦させて若手のフォローをするのが上司の仕事だった
建設業界は、悪いニュースが時々あります。
建設現場での事故や、改ざん問題、隠蔽問題など。
その度に建設現場では新たなルールが出来、二度と同じ過ちを繰り返さないようにします。
それはとても素晴らしい事なのですが、それにより若手の現場監督には任せられない仕事が多くなりました。
会社もリスクを取りたくないので、慎重にならざるを得ません。
ベテランの現場監督に仕事を任せる事はあっても、若手に思い切って経験させるという機会は少なくなりました。
その代わりに、ベテラン現場監督の仕事をよく観て覚えるようにと指導されます。
しかし、仕事とは、自分で経験して初めて身につくものだと思います。
人の仕事を見るだけで習得なんて出来るわけがありません。
本来ならば、若手に仕事を任せて、ベテランがフォローをするのが理想です。
しかし、人材不足でそんな余裕は会社にはありません。
それに今は、失敗が許されない時代です。
若手に挑戦をさせるという雰囲気がないのです。
そんな状態では、若手もやる気になれるわけありません。
「お前に任せるから、どんとやれ!責任は俺がとってやるから」と、
言える上司がいないのです。
経験もさせずに、責任も取らずに手をこまねいている会社の社員が、成長など出来ないのです。
課題・対策
- 完璧にフォローが出来る状態で若手に仕事を任せてみる
- 失敗を覚悟して若手に仕事を任せてみる
- 上司自身が若手の育成に対して面倒くさがらない
現場監督を教育する側の問題を解決出来ていますか?
現代
- OJTが名ばかりになっている
- 現代の若手に対する教育法を確立できていない
- 若手の教育に対して会社全体で真剣に取組んでいない
昔
- 自ら学ぶ時間があったので特別に教育を考慮する必要がなかった
- 挑戦(実践)をする事で十分なOJTが無意識に行われていた
- 会社は、若手は現場で覚えて成長するものと考えていた
どこの会社でも、若手社員の教育といえばOJT(On the Job Training)だと思います。
実践を通じて業務知識を身に着ける手法です。
その手法自体は有効だと思います。
ただ、本当に効果的なOJTを実施出来ているかどうかが問題だと思います。
新人教育で必ずと言っていいほど出てくる用語、PDCA。このPDCAを指導教育する側の上司・先輩が行っているかが問題です。
仕事を実践させるのは、PDCAのD(Do)の部分です。
問題はその後です。おそらく、Dで終わっていませんか?
「そんな事はない。ちゃんと若手の仕事の確認をしてるからCは出来ている」と、言われるかもしれませんね。
では、A(Act)はどうでしょう?そもそもPDCAとは、PDCAサイクルといって一度きりで終わるものではありません。
ただ実践させただけでは、OJTとは言えません。
何から教えて、どう段階的に成長させるのか。
それをどれくらいのスパンで実践するのか。
最終的にどこまでマスターさせるのか。
具体的で現実的なビジョンをもとにプランニングして実際に教育を行い、その教育そのものをPDCAサイクルで改善していかなくてはいけません。
「我が社の教育システムなら、一人前の現場監督を育て上げることが出来る!」と、胸を張って言えるようになりましょう。
課題・対策
- どこまで成長をさせるのかを明確にしてOJTを行う
- 教育方法やシステムを確立出来るまで試行錯誤する
- 個人や現場単位ではなく、会社の組織として若手の育成を考える
まとめ
結論的に、若手の現場監督の成長が遅いと感じている会社は、社会環境の変化に対応出来ていない会社なのだと思います。
常に変化と進化を続けてきた会社ならともかく、変革に後ろ向きな会社の体制は何十年もスタイルが変わっていないのではないでしょうか。
表向きには変わっているようでも、中身や本質が変わっていなければ意味がありません。
若手を教育する立場の人は、一度会社の体制を見直してみましょう。
これからの建設業界では、人材確保と人材育成が課題になります。
ただ人材がいればいいわけではなく、優秀な人材を確保する事が大切です。
しかし、初めから優秀な人材など滅多にいません。
人材を育てる能力のある会社が、これから生き残っていく会社になります。
あなたの会社も乗り遅れないようにしましょう。