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若手現場監督専用

マンション建設の流れ(着工~基礎工事編)

新米くん

建設現場ってどんな風に着工から工事を進めて行くんですか?現場を進める為に現場監督は何をするんですか?

こんなお悩みを解決します

本記事の内容

  • マンション建設着工時の手順
  • 地業工事・土工事の進め方
  • 基礎工事の進め方
  • 基礎コンクリート打設後の進め方
所長

現役ゼネコン現場監督の私がしっかりと解説します!

マンション建設は、一体どんな流れで建設が進んでいくのか。現場監督目線で、着工から竣工(完成)までの流れを簡単に説明します。各工事、工種ごとに流れを説明するだけなので、現場監督の仕事が全部記載されているわけではありません。建設現場のおおまかな流れと、それに関係する現場監督の仕事を抜粋していますので、あしからず。

マンション建設着工時の手順

各種諸官庁への届け出

現場を着手するにあたってまずは、「これからこの場所で建設工事を行いますよ」という届出を提出する必要があります。

  • 特定元方事業者等の事業開始報告書(労働基準監督署提出)
  • 適用事業報告書(労働基準監督署提出)
  • 特定建設作業実施実施届出書(市町村長宛 各自治体の環境関係窓口)

その他

  1. リサイクル届(発注者名が届出)
  2. 建設工事計画届 様式21号(建設物の高さが31mを超える場合)
  3. 他、周辺環境による必要提出書類など

その他、リサイクル届は本来建設工事の発注者が届出を行うものですが、内容は建設工事を請負う元請会社が把握している為、委任されて代わりに届出を行う場合もあります。建設物の高さが31mを超える場合は、建設工事計画届様式21号の届出が必要となります。それぞれに提出期限が決まっているので、期日までに作成して届出を行わないといけません。

また、周辺の環境によってはその他にも建設工事を行う際に届出が必要な場合があるのでよく調べておかないといけません。

工事着手前準備

工事着手前に確認・準備すること

  • 大型車両が乗入れ可能かの確認又、その為の許可申請(道路占用許可申請)
  • 上空に電線等架空線がある場合の架空線養生(電力会社・NTT・ケーブル会社等)
  • 前面道路の埋設物調査(下水・上水・ガス・電気・電話)

道路占用許可」とは、道路法にもとづき道路管理者が道路上などに継続して施設を設置する事を許可することです。つまり、道路上及び道路上空、または地下に施設物を設置する為には道路管理者の許可が必要ということです。

建設工事現場では、建設現場の敷地内に大型重機やダンプカーなどを乗り入れる事になります。建設現場の敷地に歩道が接している場合、歩道上に大型重機やダンプカーがのる事になります。一般的な歩道は、ダンプカーが乗入れるように荷重計算されていません。

なので、ダンプカーが歩道上に乗り入れても歩道が傷まない様に対策をする必要があります。対策方法は大きく分けて2通りあります。敷き鉄板で歩道を保護するか、コンクリートで乗入れを作るかです。どちらにしても、道路占用許可が必要です。まず、工事現場に工事車両が乗入れ出来るように道路占用許可を取ります。

架空線の養生は、工事中にレッカー作業などで重機や材料が電線と接触しないように電線に保護カバーを行う事です。特に電線は接触して感電したり停電の原因にもなったりするので、保護カバーを必ず行う必要があります。電線に黄色い筒のようなものが取り付いているのを見かけた事がないでしょうか。それが保護カバーです。保護カバーは保護したい架空線を管轄する会社に依頼して行います。電線の場合は管轄エリアの電力会社に依頼します。

埋設物調査は、計画地の前面道路から計画地に下水や上水、ガスなどを引き込む際に必要なの情報です。また、「道路占用許可」の申請の際にも必要なので、事前に管轄する事業所で現況状況を教えてもらう必要があります。

新米くん

いろんな所に確認や許可申請に行かないといけないんですね。大変だ。

現場を始める前には色んな申請手続きが必要だよ。その為の書類や図面の作成、提出が現場監督の仕事です。

所長

地鎮祭、安全祈願祭、近隣挨拶

地鎮祭と安全祈願祭の違い

  • 地鎮祭   ・・・土地の神様へ建設の報告と工事の安全を祈願する神事。現地に神主さんを呼んで行う
  • 安全祈願祭 ・・・神社などに行って関係者(施主・設計・建設会社・不動産会社等)が工事の安全祈願を行う

現場作業を行う前に、建設現場では地鎮祭を行う事が多いです。地鎮祭とは、建設場所の敷地を清め、無事故で建設工事が終われるように祈願する祭事です。

一般的には、建設場所に祭壇を設けて神主(宗教、宗派で異なる場合もあります)に祈祷をあげてもらいます。最近では、建設場所ではなく、神社で安全祈願を行う場合もあります。

建設場所で地鎮祭を行うには準備が多く費用も掛かります。また、外で行うので夏は暑いし冬は寒く、天候が悪いと足元も悪くなってしまうので大変です。その為、最近は安全祈願祭を神社で行うパターンも増えてきました。

地鎮祭・安全祈願祭の前後の時期に計画地の周辺の近隣へ挨拶に行きます。工事の内容説明や工事中の近隣対応の連絡先や責任者を知らせます。

新米くん

工事を行う前には工事の安全を祈願するんですね!

現場事務所の設置

現場監督が仕事をする為に、現場事務所を設置する必要があります。建設現場の敷地内に仮設のプレハブハウスを設置できる広さがあるなら、敷地内に仮設事務所を設置します。敷地内に余裕がなければ、近隣のマンションや貸事務所スペースを賃貸し、そこを現場事務所とします。

現場事務所がなければ、現場監督の仕事は出来ません。現場事務所を早期に設置するのは大切な事です。現場事務所については下の記事で解説してますので参考にして下さい。

ここをチェック

工事着手開始

建物の位置出し、基準レベルの設定

建設場所で工事着手時に初めに行うのは、建設する建物の位置を出す作業です。道路や敷地境界から、どれだけ離れた場所にどれだけの大きさの建物を建てるのかを実際に敷地に表します。そこで、敷地の形状と建物の位置が設計図通りになっているかを確認します。

ごくごく稀なケースですが、設計図の敷地形状と実際の敷地形状が違うという場合もあるので確認が必要となります。また、「基準レベル」といって設計図で設定されている高さの基準も確認をします。一般的に道路のマンホールの高さを基準にする事が多いです。

仮囲いの設置

工事を始める前に、建設現場に誰でも立ち入る事が出来ないようにする為の囲いを行う必要があります。それを、「仮囲い」と言います。仮囲いは、周辺の環境によってどのような資材でどれくらいの高さの仮囲いを行うかが変わってきます。近隣から苦情が出ないように対策を考えて選定を行います。一般的には1.8m~2m程度の高さの仮囲いを行います。

地業工事、土工事の進め方

地業工事(杭工事)

建物の位置出し、基準レベルの設定が終わり、工事車両の乗り入れが出来るようになったらいよいよ工事の始まりです。鉄筋コンクリート造のマンションの場合、杭工事を行う場合が多いです。杭工事とは、マンションの建物を支える為に、地中深くの固い地盤まで杭を打設する事です。

杭工事を行う前に、「杭伏せ図」の作成、「杭工事施工計画書」の作成が必須です。そして、杭を打設する位置を現場に出します。杭を打設するのは杭工事業者ですが、打設する杭の位置を出すのは現場監督の仕事です。

最近は測量業者にお願いをして出してもらう事もありますが、その確認は現場監督の仕事になります。また、工事中の杭の材料、工程写真などの工事写真を撮影するのも現場監督の仕事です。

土留め工事

杭工事の前後に行うのが土留め工事です。土留め工事とは、杭工事の後に基礎工事を行う為に掘削工事を行うのですが、基礎工事は道路地面から深さ2~3mほど下に造ることが多いです。高層マンションならもっと深い位置で基礎を造ることもあります。

そんなに深くまで掘ってしまうと、近隣の地盤に影響を与えてしまうかもしれません。そうならない為に、「土留め壁」という壁を土の中に造るのが「土留め工事」です。建物基礎の外周に土留め壁を造る事で、基礎を造る為に掘削工事を行っても土留め壁から外の敷地には影響が出ないようにすることが出来ます。

土留め工事はいくつもの土留め方法がある為、現場の環境、条件に適した土留め工事を選定する必要があります。土留め工事を行う時も、「土留め計画図」という土留めの施工図が必要なのと、「土留め工事施工計画書」が必要です。

土工事(掘削工事)

地業工事が終わり、土留め計画による土留め工事が完了したら、いよいよ基礎工事を行う為に地面を掘っていきます。建物の基礎を造る為に設計図にて設定された基礎底の深さまで重機にて掘削します。ちなみに、一般の人がショベルカーと呼ぶ重機は、現場では「バックホウ」と呼びます。

ショベルカーや、ユンボとも呼びますが、その二つはメーカーの商標名となる為あまり使いません。バックホウは行政が使用する呼び名の為、現場ではバックホウと呼ぶのが普通です。基礎の掘削底まで掘削したら、砕石を敷いて転圧し、その上に捨てコンクリートと言って、基礎工事を行う為の場を造る為にコンクリートを打設します。

掘削工事状況
掘削完了状況

基礎工事の進め方

掘削工事が終わり、捨てコン打設を行ったら次は基礎工事です。いよいよ鉄筋コンクリート工事が始まります。現場監督は、基礎工事が始まる前に「基礎伏せ図」を作成しなくてはいけません。基礎の捨てコンクリート打設後から基礎コンクリート打設までの流れは以下の通りです。

  1. 基礎墨出し(杭芯位置、杭天端レベル確認・杭頭補強工事・梁底架け)
  2. 基礎用足場組
  3. 基礎配筋(基礎エース設置・圧接工事)
  4. 基礎型枠組
  5. 基礎コン打設 

墨出し

墨出しとは、基礎の平面的な形状を捨てコンクリートの上に文字通り「墨」で描く事です。墨ツボという道具を使って線を描きます。まず、基準線を出してから、基礎、地中梁、柱などの構造の位置を出します

墨出しは、基礎の型枠組を行う際の位置を出す作業なので、型枠大工の仕事です。また、地業工事で打ち込んだ杭の頭が掘削工事によって見えているので、その時に杭の位置がズレていいかを計測します。

杭の位置が規定範囲内であれば問題はありませんが、規定範囲よりもズレていた場合は、基礎部分を補強するなどの処置が必要です。

基礎足場組

基礎足場とは、基礎工事を行う上で必要となる足場の事です。基礎配筋工事、基礎型枠工事、基礎コンクリート打設工事が安全に行われるように計画します。

鉄筋足場をどうやって組むのかも、現場監督が計画をしなくてはいけません。鉄筋工、型枠工と打ち合わせを行い、スムーズな仕事が出来かつ安全な足場計画を行います。足場組に必要な資材の数量も、現場監督が計算して発注します。

基礎配筋

基礎配筋は、その名の通り基礎の配筋(加工した鉄筋を組み立てる)作業です。設計図の構造図に示された通りの配筋を、鉄筋工が行います。一般的なラーメン構造の基礎配筋であれば、配筋手順は以下の通りです。

  1. 基礎(ベース)下筋配筋
  2. 柱配筋
  3. 地中梁配筋(圧接作業)
  4. ベースハカマ筋(上筋)配筋

地中梁を配筋するのに上主筋を支える為の基礎エースを使用するかどうかは事前に鉄筋工にへの確認が必要です。現場監督は、配筋要領、本数、ピッチ(間隔)などが構造図通りか確認し、配筋が完了したら配筋写真の撮影を行います。

配筋写真は検査や監理者の確認の為に必要なので、撮り忘れのないようにしなければいけません。配筋状況はコンクリートを打設してしまうと隠れてしまう部分なので、必ず証拠として残しておく必要があります。

基礎型枠組

基礎配筋が完了したら、今度はコンクリートを流し込む為の型枠を組み立てます。型枠とは、一般的にコンパネと呼ばれるベニヤ板と2×1桟木と呼ばれる木材を組み合わせて作るパネルを組み立てたものです。

パネルを建込み、釘や型枠用の専用の資材で締め付け、固定を行います。鉄筋の配筋は基本的に設計図の構造図に示された配筋要領に基づいて施工、確認をします。

しかし、型枠の組み立ては構造図だけではなく、基礎伏せ図という型枠建て込み用の施工図を作成し、基礎伏せ図を基にして施工します。型枠大工は事前に基礎伏せ図を参考にして必要な型枠材を加工したり必要な資材を手配して現場に搬入するのです。

コンクリートを打設する時は、コンクリートの自重(2.3t/㎥)やコンクリートを流し込む時に圧力が掛かります。それらに耐らえれるだけの型枠の固定を行わないと、コンクリート打設が出来ません。ただ組み立てればいいわけではないので、簡単な作業ではないです。

基礎コンクリート打設

コンクリートの打設は、建設現場にとっては大きなイベントの一つです。コンクリートポンプ車と呼ばれる生コンクリートを圧送する重機に、生コン車で運ばれてきた生コンクリートを流し込んで打設していく作業なのですが、作業を行うのに複数の業者がチームになって打設を行います。

「コンクリートポンプ工」「コンクリート土工」「型枠大工」「設備工」「電気工」「ガードマン」必要であれば「左官工」。最低でもこれだけの業者が参加し、基礎の規模によって人数編成も変わってきます。

例えば、基礎コンクリートの打設数量(生コンクリートの数量)が150㎥程度であればポンプ工2名、土工5名、型枠工1名、設備工1名、電気工1名の10名程度です。

左官工が必要かどうかの判断は、仕上げとしてコンクリートの天端を綺麗に金鏝(こて)で押さえるなどの特別な理由があるかどうかです。基礎の場合は一般的に隠蔽部になる場合が多いので、その場合は左官工は必要ない事になります。

コンクリート打設状況

コンクリート打設前には、生コンクリートの試験を行う必要があります。生コン車で運ばれてきた生コンクリートが、実際に発注した規格(性能)を満たしているか確認をしなくてはいけないからです。

また、コンクリート供試体といって後日圧縮強度試験を行う為のサンプル用の生コンも同時に採取します。ここで詳しく説明すると長くなるため、改めてコンクリート打設については別記事で解説をするようにします。

生コンクリート試験

基礎コンクリート打設後の進め方

コンクリート打設が完了後、基礎型枠の解体ができるだけのコンクリート強度が出たのを確認したらいよいよ型枠の解体です。型枠大工は型枠を組立てる専門の大工です。解体は別です。

一般的に解体工と呼ばれますが、型枠を解体する専門の業者がいます。基礎工事が終われば、基礎足場も必要ではなくなるので、基礎足場も解体を行います。足場の解体は、組立てた鳶工が解体も行います。

型枠を解体し、足場を解体すると、現場には鉄筋コンクリート造の基礎だけが残ります。(当たり前ですが)基礎工事が終わると、次は1階の床になる部分の躯体工事です。

一般的には、基礎以外の掘削工事で削った土の部分を埋め戻す、埋め戻し作業(そのまんまのネーミング)を行います。そして、設備工により埋設配管といって、建物の地中部分に行う設備配管をしてから、1階床部分の工事に着手するのです。

まとめ

今回は着工から基礎工事の完了までを説明しました。地面よりも下の作業は掘ってみないと分からない事もあるので、工程は余裕をみておきたい所です。土質や地下水位はボーリング調査である程度データは取れてはいますが、予期せぬ埋設物などが出てくる事もあります。

また、地下水位の深さによっては地下水が湧き出てくる為に対処しないと工事が出来ない時もあります。天候によっても左右されやすい作業も多いので、天気に恵まれないと工事に影響が出たりもします。

着工から基礎工事までは地味で単純そうな作業ですが、大型の重機を使用する作業もあるので安全管理については毎日の点検等油断せずに行う必要があります。現場監督は、着工時の仕事は沢山あります。

現場も見ながら施工図の作成をし届出や書類の作成、工事写真の撮影と多忙です。効率よく仕事が出来るように事前の準備が大切になります。

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